今井澂プロフィール

講演・出演など

お問合せ


« 映画「ジャージーボーイズ」とNY株につれ安した株(第743回) | トップページ | 映画「喰女(クイメ)」と”複合下落”のわけ(第745回) »

2014年10月12日 (日)

映画「生きる」とNY株式市場でいま発生していること(第744回)

映画「生きる」とNY株式市場でいま発生していること(第744回)

 モントリオール映画祭で二冠を獲得した「ふしぎな岬の物語」を期待して観に行ったが、残念ながら駄作。よほどのサユリストでないと評価しないだろう。ただ漁師の徳さん(笹野高史)のエピソードで末期の胃ガンの演技がうまかったので、黒沢明の名作「生きる」の志村喬を想い出した。死期を悟った市役所の課長が公園をつくるのに生命をかける。珍しく三船敏郎の出ていない黒沢映画だ。

 「死期」。誰にでもある。株式相場でも同じだ。

 今年これまでのところ、NYダウが前日比200ドル以上の上昇・下落となったのは、12回。うち6回は9月25日以降で発生している。

 

 これだけ荒っぽい値動きを見せるのは私の経験では投資家の心理の不安感、それも強い不安感あるいは恐怖感を示すものに他ならない。事態は容易でない

 現に「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数は10月10日に11・5%も上昇し、20・9%になった。またナスダック市場の出来高は前日比24%の大幅増加で、機関投資家の投げが出ないとこんな大商いにならない。どう見ても9月19日の1万7350ドルが天井で下げ相場に入ったに違いない。ごくごく目先は下げ止まりあり、しかしまた下落に入るだろう。

 

 普通は半年から1年半ぐらい。下値は少なくとも上昇相場が始まった1万4700ドル近辺。断言するには早すぎるが、15%の調整は必至とみる。私はテクニカルアナリストではないので、あくまでもカンだが。

 

 それ以上は?長期金利が2%台の中央のうちは、まず、ないだろう。米国の財政収支の赤字は急速に減少しており、国債の発行に歯止めがかかっているし、ドル高で買い手にも、現在のところは事欠かない。3%を超えてくれば大ごとになるが。

 

 下げの背景は先週申し上げた通り。①銀・証分離法案に絡んだデリバティブ解約不安②ベンガジゲート、不法移民問題によるオバマ弾劾への懸念③QEⅢ完了後のFRBの方策への不安感④欧州、中国の不況、などなど。

 

 問題は東京株式市場。この2週間の外資系証券の先物の手口、現物の売りを見ると海外の機関投資家大手が日本株のポジション減少に動いている。ところがGPIFのストーリーが効いて裁定買い残は24億株を超えており、あと4,5億株減らないと整理は終了と考えにくい。

 それに1ドル110円をつけた後の為替市場ではヘッジファンドの動向をみると105,6円はみておいた方がよさそうだ。となると1万5000円で止るか、どうか。

 

 やはりカギはGPIF。報道によると塩崎厚労相は官僚の抵抗にあって、組織改革法案の提出は遅れている。株価の1万6000円台回復が9月中旬の瞬間風速で止まったのはこの抵抗のせいに違いない。

 株価を重視する安倍政権。総資産130兆円のGPIFの株式組み入れ比率アップを早くから流していたから、現行の17・3%から20%への引き上げは9月に織り込んでいた。となると「25%」とか「18~30%」という比率にしないとサプライズになるまい。恐らくそうなるだろう。

 もうひとつ。事情通に聞くと、「国債保有率を下げる分を日銀がスワップ取引で引き取ることを検討中」という。これも運用改革の進行を投資家に強く印象付けるに違いない。結論。NY株ほどには東京は下げない。

 

 黒沢明全集での「生きる」についての演出前記から。「僕は時々、ふっと自分が死ぬ場合のことを考える。するとこれでは、死にきれないと思って、居ても立っても居られなくなる。(略)「生きる」という作品は、そういう僕の実感が土台になっている。」「残された僅かの時間をあわてて、立派に生きようとする。」

 この名作を1968年ニューヨークのカーネギーホールの地下の名作座で観たときの思い出を。ラストに近く主人公が歌を歌いながら雪の中で公園のブランコに乗っているシーンで、周囲のアメリカ人が、みんな、本当にみんなが泣いていた!日本人の誇りを胸いっぱいに感じた。

 黒沢監督はこの時42歳。2年あとに最高傑作「七人の侍」をつくる。40代の私は自分の死なんて考えもしなかったが。

 主人公のセリフ。夕焼けをみて「実に美しい。この30年間、すっかり―。いや、私にはもうそんな暇はない」。私は来年80歳。本当にもう残された時間は少なくなった。

« 映画「ジャージーボーイズ」とNY株につれ安した株(第743回) | トップページ | 映画「喰女(クイメ)」と”複合下落”のわけ(第745回) »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 映画「ジャージーボーイズ」とNY株につれ安した株(第743回) | トップページ | 映画「喰女(クイメ)」と”複合下落”のわけ(第745回) »