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2014年12月28日 (日)

映画「フューリー」とロシアと原油安の行方(第755回)

映画「フューリー」とロシアと原油安の行方(第755回)

 ブラッド・ピット主演の戦争映画。宣伝ではアカデミー賞作品種の有力候補。たしかに博物館から昔の戦車を持ち出して迫真感を出した。かつて私がTVにかじりついてみた「コンバット」を思わせる。

 1944年の独戦線。大砲に「フューリー(激怒)」と名付け、四人の部下とともに戦う。他の三台とともに歩兵の護衛を命じられるが、米軍のシャーマン戦車とケタ違いのスケールの独ティガー戦車と遭遇し、友軍戦車は皆やられ、残るは一台。しかも地雷を踏んでキャタピラーが破損、動けなくなったところに独陸軍の精鋭300名がやって来る。さあどうする。戦軍長のブラピは戦うと宣言する。「ここ(フューリー)はオレの家だ」。部下四人も戦いに参加、死闘が始まる。

 

 いまの市場の関心は原油とロシア。これを「新冷戦の開始」と解釈すればプーチン大統領が参ったというか、ロシア経済が破たんするか。意図したデフォルトを起こしてわざと混乱を起こすか。

 私は米国の政治混乱とかシェール革命失速がNY株式市場の下落につながるかも、と読んできた。しかしオバマを弾劾したり、ジャンク債から金融不安が起きる―といったストーリーはその可能性は後退した、と見る。戦略的に米国の実権を握っている支配層(メジャーだったり軍産複合体も)が、何とかぼろを出さずに少なくとも1年間は乗り切る。代わりにオバマはレームダックになり、ヒラリーも出馬しない―。この情報はそれぞれあるところから入手した。余りにも荒唐無稽な楽観論と言われることは百も承知で今週は意見を転換している。ご批判ください。

とは言え、2,3週間先にちょつとした調整はあるだろうが、1年間の上げ相場、という読みには変わりはない。

 となると、NYダウ2万ドル、日経平均2万円の揃い踏み、となる。

 2015年は、従ってバブルくさいといわれつつ、株は日米とも高いー。先週までの私の意見と違う。

 米国としてはロシアと中国が連合して昔の共産圏体制になるのを防いで、いつの日にかやって来る米中対決の前の準備作戦ににしたい。

 米国が一国としてそんな戦略で統一されているはずがないという反論もあろう。しかしあの国はどうしても世界一でいたい国だし、これまででもピンチになると動きがあった国だ。

 ただひとつ。このシナリオを崩す数字で、私の頭の中から離れない一つの数字がある。1・4という数字だ。

 GDPに対し株式市場の時価が何倍であるから見て、割高か割安かを判断する。ウオーレン・バフェット氏が創案した指数。

 アト知恵だが、日本株があの3万8900円を付けた89年に1・43だった、いまのNY株式市場は1・41に近い。従来から私のカンだと断りながら、「皆が2万ドルを確信して言い出したら、1万9000近辺で大天井」と言ってきたので、今さら引っ込めるのは少なからず、みっともない。

 

 今回の私は「フューリー」の戦車長のような、ある意味で無謀な戦いをし始めているのかも、知れない。

 私はヘッジファンドに相当なソースがあるせいか、仕掛けやすい不安材料に反応しやすい。

 しかし2014年を回顧してみると、アルゼンチン危機に始まっていろいろなテール・リスクはあったものの、結局、米国経済の好転につれての株高は続いた。

 もう史上四番目の長期の上昇相場(10%以上の下げがないままに)が続いている。誰しもが、もうそろそろ、と考える。

 辛抱強く大幅下落のときを待って「当たった、当たった」と自慢したいが、現実の方がなかなかそうは行かない。少なくとも2015年は、「まだ」暴落説は当たらないのではないか。

 

 NYはいいが日本は?安倍さんはツイていると思う。逆オイルショックが2年間、下値バレル40ドル以下でつづいたら、景気も(もちろん企業収益も)いい。

 週刊朝日の1月2日―9日号で私の意見が紹介された。(166~170ページ)。私はいちばん強気で、2万5000円。年末の予想だ。外れたらゴメンナサイだが。

 

 映画のセリフから。ブラピが言う。「理想は平和だが、歴史は残酷だ」。来年末に残酷な現実を見ないで済むことを望むばかりだ。

 

それでは読者の皆様に一年間のご愛読を感謝し、来年もどうぞよろしくお引き立てをお願い申し上げます。

またおそろいにて、良いお正月をお迎えください。

私は来年で80歳ですが、ますます元気。皆様に役立つ情報を差し上げ続けたいと思っています。

死ぬまで現役。4月には渡米して取材してきます。では皆様どうぞグッド・ラック!!

2014年12月21日 (日)

映画「ゴーン・ガール」と私のNY株弱気日本株強気のワケ757

映画「ゴーン・ガール」と私のNY株弱気の理由(754回)

 今年のアカデミー作品賞の有力候補の評判通り。デビッド・フィンチャー監督は後から想い出してもゾッとするスリラー映画をつくった。頭が切れる美人の妻が失踪し、夫は妻殺人の疑惑を受ける。夫は妻の親友も血液型も趣味も知らず、TVに引っ張り出されてあからさまに犯人扱いされる。しかし妻は生きていて―まあそこからネタバレになるからやめておくが、メチャ面白いから―。ただし大人の観客に限るが。

 

 本当に恐ろしいのは、映画の中途まではオハナシ、つまりアチラの世界のことと思わせて、最後は「実はコチラの話しです」というオチに変わってゆくところだ。誰もが自分のパートナーがコワーくなってくる。原作はギリアン・フリンの小説で、米国では大ヒット中。

 

 私が株価の長期動向予想を的中させた例で、一番大きかったのが1989年末の日経平均3万8915円のあとの長期でしかもメチャメチャな下げ相場。この時の私の武器は三重野日銀総裁が金利を引き上げ続けているのにもかかわらず株価がほとんど無視。イールドスプレッドが当時9%台。私はチャートで2万円もあり得ることを「週刊東洋経済」で公表した。まさかデフレ突入と日経平均6000円台までは読めなかったが。

 

 私と違うやり方でウオーレン・バフェット氏が株価の割高、割安を判断している。GDPと株式市場の時価総額との比率で、2009年のリーマン・ショック時には0・6台でここは底値だった。

 ところが2014年12月現在、これは2006年のピーク時、1・2を抜いて1・4に達している。高い。危ない。日本の方はいま1・1だが。89年の日本株も、1・4をつけていた。12月の1万8000ドルを抜いて歴史的高値更新はないとは言えないが、それだけリスクが高まる。ここから上は弱気だ。

 

「 どこいら辺が大天井?」映画の妻の失踪と同じで分からない。私は90%の投資家がダウ2万ドルを確信し、1万8900とか1万9300とか、そこらが天井になると読んではいるが、理屈じゃない。天井近辺には好業績のほか好材料ばかりしか見えないのが通例だから。また危ない危ないといわれてからでも、結構それからの上昇幅は大きいものだ。

 

 でも下げの材料は見当がつく。第一はこのコラムで何回も書いたベンガジゲート事件。問題が表面化すれば共和党が絶対に有利になる。第二は原油安が大幅で、しかも今後この状態が長引く。ジャンク債市場でのリスク急拡大がサブプライムと同じ事態を招く公算大。そして第三はロシアやベネズエラなどの経済危機。それに加えて豪腕プーチン大統領が「何か」をやること。

 

 必ず聞かれるのは、「いつ?」だがこれが分かるなら苦労しない。「下値は?」高値比10%以上はあるだろう。恐らくそれ以上。

 「NYはわかった。日本は?」お付き合いで下がることはあり得るが、12月の日経平均1万8030円を、いずれ明年の早いうちにぬくだろう。理由?日銀ETF買いとGPIF。それに企業収益の急上昇。背景は原油安と円安だ。

 

 米国株で言い忘れた。QEⅢが10月に終わっており、FOMC議事録からみると2015年6月に「金利の正常化」が始まる。長期金利の上昇が始まるかどうか分からないが、始まればだれもが長期金利3^4%を頭に浮かべる。3年以上かかるのだろうが。。恐らく投資家はここ数年の上昇(株も債券も)で投資ポジションは買い一本だろう。これが巻き戻しになってポジションは反対売買または縮小に向かうはずだ。

 

 一方安倍政権は長期安定。第三の矢にあたる成長戦略が次々と実現してゆき、株式市場では次から次へと取り上げるテーマが出て、関連銘柄の株価は上がるだろう。

 

 ついでに。テールリスクとして中国があるが、現時点では不動産バブルの破裂以降、金融不安が発生する前の「何とかしようとしてますます病状がひどくなってゆく」段階。日本の93,4,5年ごろの状況で、まだ2015年、16年はゴマかしが続く期間と見ている。

 

 映画のセリフから。最後にケロリとした顔で失踪から帰った妻は夫に言う。「結婚なんてみんなこんなものよ」。どうぞ結婚したい未婚の若者はこの映画はご覧にならないように。またまだ新婚ホヤホヤのご夫婦も。しかし相場と結婚とよく似ている。上昇期が「あれれ」と思っているうちに下降。ダメになり始まると容易なことでは上昇期のエネルギーは回復しない。来年はどういう年になるだろう。

2014年12月14日 (日)

映画「チェイス!」とシェール革命の蹉跌不安(第753回)

映画「チェイス!」とシェール革命の蹉跌不安(第753回)

 インド映画の歴代第一の興収を挙げているヒット作で、アクションありダンスありのエンタティメント。主演アーミル・カーンが49歳だが見事な肉体美と若々しさで20そこそこの若者を演じる。

 マジックとダンスを融合したショーでシカゴ中を熱狂させたサーカス団。その団長を父に持つ主人公は、父がシカゴの銀行により破滅、自殺に追い込まれたのを恨み銀行強盗を次々に重ねサーカス団を復活。犯人はインド人と断じた米警察は二人の警部を本国から招いて捜査させる。バイクによるチェイスが見せ場。繰り返しが多く少し飽きるが一見に値する。

 

 銀行への復讐は父の遺訓からだが、仇討話はインド映画の伝統とか。私は今回のサウジアラビアによる減産拒否、そして原油価格急落という世界を揺るがす事態と似たようなものを感じた。

 

 6月頃バーレル110ドル台。これが12月に入り50ドル台にまで急落した。サウジの減産拒否からだ。

 サウジの狙いはいくつも。米国に頼まれてロシアを困らせるため、とか。シーア派の大国イラン。産油国内部でサウジと常に対立してきたベネズエラへの圧力。これでOPECの盟主としてのサウジの地位の回復を狙う。

 それよりも何よりも、サウジの石油相が明確に述べたように、米国のシェールオイルの増産にブレーキを掛けること、これが主眼だろう。

 一方米ルー財務長官は先週記者会見で「米国のシェールオイル生産は減少しない。打撃は見られない」と強弁した。

 

 しかし株価は違う。代表的な独立系シェールガス(併産されるオイルも)採掘販売会社のコンチネンタル・リソーセズは9月の80ドルから最近33ドルに6割も下落。EOGリソーセズは120ドルが80ドル、アナダルコ・ペトロリアムは110ドルが75ドルになった。

 ジヤンクボンドの世界ではもっと不安感が漂う。この市場の16%はシェール革命関連の銘柄だが4月に利回りは30年ぶりに5%を切る低金利で絶好調。ところが原油価格低下に伴って7%以上に達する金利上昇」(価格は低下)になった。1兆3000億ドルのジャンクボンド市場では只今モーレツな勢いで資金は流出中だ。

 日本でハイイールド債のファンドを持っている人は儲けのあるうちに利食いをしておいた方がいい。日本のシェール関連銘柄信越化学も8月におすすめしはじめたときは6300円だったが8500円がついたし一応目先の目標達成。2,3年もつ方は別にしてこれも「利食い千人力」。

 

 おカネの世界は株でも債券でもリスクが出ると反応は早い。米国の国債市場でも2年物の利回りは上昇してイールドカーブは横になってきた。景気の現状の年後半好調説を否定し始めたように見える。

 それもそうだろう。米国経済は2005年から2013年まで年1・2%で成長したが、シェール革命がらみの産業の成長は(付加価値ベース)6・5%と高い。革命にブレーキがかかれば景気全体が一挙に見通し難になる。

 ただし、これは米国のこと。日本の方は4~6、7~9とマイナス成長だったが、10~12はかなりいい成長を取り戻す。株価の方は日銀のETF買いが予算満杯となったため、たとえば12月10日の大幅下げは見送ったし年内はまあせいぜい強含み横這い程度。自民党の大勝利は「ウワサで買ってニュースで売る」ことに。

 原油安、円安は間違いなく企業収益の上昇要因。私は来年末までに2万5000円という目標を変えない。

 

 映画のセリフから。死ぬ前の父が何遍も教えた決意の言葉。「われらは神の子。誰が挑められるか。希望の太陽、四方よりいずる。鋼の決意、揺るがぬ歩み。運命を記さんため、いざ今日行かん」。長期の大相場を私は確信している。いざ、行かん。ただその前に利食いも忘れずに。

2014年12月 7日 (日)

歌舞伎「勧進帳」とヘッジファンドの仕掛けと円安(第752回)

歌舞伎「勧進帳」とヘッジファンドの仕掛けと円安(第752回)

 歌舞伎の代表的人気作品。同時に、弁慶役は人気俳優が必ず演ずる大役だ。ここ5,6年で私は幸四郎、団十郎、海老蔵、吉右衛門、仁左衛門、それから先月染五郎を観た。天保11年()1840年)の初演のときには関守の富樫が間抜けとして演じられたが、ここ100年ぐらいは、強力(重い荷物のポーター)に身をやつした義経の正体を見抜きながら関所の通過を許してやると変わった、とか。

 弁慶の勧進帳の読み上げ、山伏問答のあと、いったん一行の関所通過が認められたが、強力の正体は義経では、と見とがめられる。富樫の疑念を晴らすため弁慶は主人義経を激しく金剛杖で打つ。その苦悩を見て富樫は切腹覚悟で、関所の通過を許してやる。涙をこらえる富樫の演技は勘三郎が実に巧かった。

 富樫に見とがめられ一瞬にして舞台は緊迫感に包まれる。必死になって事態解決を思案する弁慶。ヤマ場のひとつだ。

 緊張感と言えば、もう何年も前から格付け会社の日本国債の格下げと長期金利の急騰、悪性のインフレというハルマゲドン説が永い間語られてきた。いまでもそのテの本が年に何冊刊行されていることか。言い出したカイル・バスはもう日本売りでは存在感はないが。

 12月1日の夕方、ムーディズがワンノッチの格下げを発表、その日の夜は米系ヘッジファンドが「円買い、日本株売り、日本国債売り、CDSスプレッド買い」のワンセットを行った。私に言わせれば格付け会社とヘッジファンドは「共謀」していたのだろう。

 だが、このヘッジファンドの攻撃はごく短期の成功に終わった。12月2日の寄り付きこそ株価は小安く円レートも高かった。またCDSスプレッドも上昇し日本国債10年物も上昇。しかしあっという間にこの逆になってしまった。

 当たり前だ。2014年の1~3月のような支配力をヘッジファンドはもう持っていない。いまや日本の株式・債券市場はGPIFと日銀が押さえ込んでいる。いわば「官製相場」だ。しかも国債の方は、野党時代の自民党に「Xデー委員会」が詳しく検討し、準備している。ライオンが口を開けたところに首を突っ込んだようなものだ。

 外国の銀行は日本国債を買うのをヘジテイトするかも。また手持ちを売るかも。しかし日銀が買ってしまう。

 ついでに。私が知っているマトモな対日投資家は、日本の借金を「ファミリー・イシュー」つまり家族の問題だ、と言っている。親の借金を子のもつ金融資産で返済できる、という意味だ。

 もうひとつ。CDSスプレッドは、日本より格が上のはずの台湾は322、中国は130、韓国は78(それぞれベーシスポイント)。これに対し日本は58。日本の方がずっとリスクが低く安全と評価されている。

 ただ一つ、一つだけ日本にとって具合の悪い展開がある。それは円安。

 6日(金)の米雇用統計の予想以上の32万人増もの好調な数字もあって、私が「超すに越されぬ田原版」と考えていた1ドル120円のカベはあっさりと超えてしまった。この円安の方は日米の金利格差の問題が材料だし、手持ちのドルを売るしかないが事実上不可能。この水準だと「悪い円安」だろうし、長期的には大問題だと思うがやはり円安は目先はメリットの方が大きい。

 株価の方。1970年以降、任期満了をのぞいて解散、総選挙が13回あり、解散当日から投票日までの株価は12勝1敗。現在自民勝利を織り込みに行っている。315は獲得しよう。何となく、だが三菱重工を買いたくなった。

 注意すべきは投開票日から1か月後と比べると、株価は6勝7敗で下落の方が多いこと。まあ業績がいいし、GPIFという切り札があるから大丈夫だろうが。

 

 「勧進帳」のセリフから。散々、弁慶に金剛杖で殴られて危機を脱した義経が、泣いて謝る弁慶に言う。「今回の機転、凡慮のおよぶべきところにあらず。かたじけのう思ゆるぞ」。美しい主従関係だが、観客は、こうして陸奥に脱出しても最後は頼朝の圧力で奥州藤原氏に義経も弁慶も最後には討たれてしまうことを知っている。ヘッジファンドは必ずまた次の仕掛けを考えており、どこかで巨利を狙って来る。私は今回の勝利と別に「次」「その次」が実は心配でならないが、それはまた別の機会に。

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