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2014年12月 7日 (日)

歌舞伎「勧進帳」とヘッジファンドの仕掛けと円安(第752回)

歌舞伎「勧進帳」とヘッジファンドの仕掛けと円安(第752回)

 歌舞伎の代表的人気作品。同時に、弁慶役は人気俳優が必ず演ずる大役だ。ここ5,6年で私は幸四郎、団十郎、海老蔵、吉右衛門、仁左衛門、それから先月染五郎を観た。天保11年()1840年)の初演のときには関守の富樫が間抜けとして演じられたが、ここ100年ぐらいは、強力(重い荷物のポーター)に身をやつした義経の正体を見抜きながら関所の通過を許してやると変わった、とか。

 弁慶の勧進帳の読み上げ、山伏問答のあと、いったん一行の関所通過が認められたが、強力の正体は義経では、と見とがめられる。富樫の疑念を晴らすため弁慶は主人義経を激しく金剛杖で打つ。その苦悩を見て富樫は切腹覚悟で、関所の通過を許してやる。涙をこらえる富樫の演技は勘三郎が実に巧かった。

 富樫に見とがめられ一瞬にして舞台は緊迫感に包まれる。必死になって事態解決を思案する弁慶。ヤマ場のひとつだ。

 緊張感と言えば、もう何年も前から格付け会社の日本国債の格下げと長期金利の急騰、悪性のインフレというハルマゲドン説が永い間語られてきた。いまでもそのテの本が年に何冊刊行されていることか。言い出したカイル・バスはもう日本売りでは存在感はないが。

 12月1日の夕方、ムーディズがワンノッチの格下げを発表、その日の夜は米系ヘッジファンドが「円買い、日本株売り、日本国債売り、CDSスプレッド買い」のワンセットを行った。私に言わせれば格付け会社とヘッジファンドは「共謀」していたのだろう。

 だが、このヘッジファンドの攻撃はごく短期の成功に終わった。12月2日の寄り付きこそ株価は小安く円レートも高かった。またCDSスプレッドも上昇し日本国債10年物も上昇。しかしあっという間にこの逆になってしまった。

 当たり前だ。2014年の1~3月のような支配力をヘッジファンドはもう持っていない。いまや日本の株式・債券市場はGPIFと日銀が押さえ込んでいる。いわば「官製相場」だ。しかも国債の方は、野党時代の自民党に「Xデー委員会」が詳しく検討し、準備している。ライオンが口を開けたところに首を突っ込んだようなものだ。

 外国の銀行は日本国債を買うのをヘジテイトするかも。また手持ちを売るかも。しかし日銀が買ってしまう。

 ついでに。私が知っているマトモな対日投資家は、日本の借金を「ファミリー・イシュー」つまり家族の問題だ、と言っている。親の借金を子のもつ金融資産で返済できる、という意味だ。

 もうひとつ。CDSスプレッドは、日本より格が上のはずの台湾は322、中国は130、韓国は78(それぞれベーシスポイント)。これに対し日本は58。日本の方がずっとリスクが低く安全と評価されている。

 ただ一つ、一つだけ日本にとって具合の悪い展開がある。それは円安。

 6日(金)の米雇用統計の予想以上の32万人増もの好調な数字もあって、私が「超すに越されぬ田原版」と考えていた1ドル120円のカベはあっさりと超えてしまった。この円安の方は日米の金利格差の問題が材料だし、手持ちのドルを売るしかないが事実上不可能。この水準だと「悪い円安」だろうし、長期的には大問題だと思うがやはり円安は目先はメリットの方が大きい。

 株価の方。1970年以降、任期満了をのぞいて解散、総選挙が13回あり、解散当日から投票日までの株価は12勝1敗。現在自民勝利を織り込みに行っている。315は獲得しよう。何となく、だが三菱重工を買いたくなった。

 注意すべきは投開票日から1か月後と比べると、株価は6勝7敗で下落の方が多いこと。まあ業績がいいし、GPIFという切り札があるから大丈夫だろうが。

 

 「勧進帳」のセリフから。散々、弁慶に金剛杖で殴られて危機を脱した義経が、泣いて謝る弁慶に言う。「今回の機転、凡慮のおよぶべきところにあらず。かたじけのう思ゆるぞ」。美しい主従関係だが、観客は、こうして陸奥に脱出しても最後は頼朝の圧力で奥州藤原氏に義経も弁慶も最後には討たれてしまうことを知っている。ヘッジファンドは必ずまた次の仕掛けを考えており、どこかで巨利を狙って来る。私は今回の勝利と別に「次」「その次」が実は心配でならないが、それはまた別の機会に。

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