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2015年10月31日 (土)

映画「ジョン・ウイック」と中国のQEとドイツ危機(第798回)

映画「ジョン・ウィック」と中国のQEとドイツ危機(第798回)

 キアヌ・リーブスの最新作。この人は「スピード」でブレークし「マトリックス」三部作がヒット。その後いい作品がなかったが、今回の新シリーズはなかなかいい。スタエルキ監督はマトリックスシリーズでキアヌのアクション担当だったので、新鮮な画像をつくり上げた。

 「ガンフー」と名付けられた柔術アクションは、室内で間合いをつめ。敵の銃撃をかわしながら撃つ。神がかり的なすご腕で次々となぎ倒すクールなキアヌは、一見の価値がある。何しろ「殺し屋を殺す」男だから、強いの何の。

 設定も面白くシュールな笑いを誘う。特別なホテルが殺された死体の処理班を回してくれるし、大けがをしていてもナゾノ錠剤をのむとまた強くなるとかー。たった一人で犬一匹のためにロシアンマフィアを壊滅させるなど。

 

 いま経済マスコミでは広く中国崩壊説がまかり通っている。一方いろんなシンクタンクの中国担当者は「大丈夫です」。

 組織の中にいて、しかも中国に出張して現地の人に聞くと、中国がツブれるなんて考えられまい。旧ソ連が崩壊する時も、専門家は誰一人予見できなかった。長谷川慶太郎先生だけだ。

 

 私は年20万回も暴動が起き、鎮圧のための公安経費が12兆円以上、軍事費を上回る国が一党独裁しているのは、遅かれ早かれいずれ、ダメになると思う。

 しかし、コトが起きるのは2017年。ことし来年は大丈夫、と申し続けてきた。なぜか。

 

 理由第一。不良債権による地方自治体、銀行の倒産は10月10日発動された「貸付担保再融資制度」で延命した。これは銀行が貸借契約書を担保に人民銀行から資金を借りることが出来る「債務担保劣後ローン」。7兆元(131兆円)の流動性を生む。システミックリスクはこれで当面回避された。

 理由第二。米国は冷戦勝利の体験から、一発も弾を打たないで国際金融の世界から中国崩壊を狙っていること。

 習近平は人民元を国際化しAIIBの資金需要を賄おうという狙いを持つ。米国が後ろにいるIMFは「人民元の変動幅拡大と金融市場の自由化」を条件に、人民元のSDR通貨入りを認めると示唆した。時期は来年9月。

 そうなれば、かつてジョージ・ソロスが英ポンド(92年)やアジア通貨投機(97年)で巨利を博したように、大規模な元売りで中国を自由変動相場制に追い込む。外貨準備の取り崩しで元を買い支えるが、それも中国側は負ける―。

 

 キアヌの「ガンフー」が柔術と拳銃の組み合わせのように、この二つが私の2017年中国崩壊説の根拠だ。

 天津の大爆発事故(テロらしい)からもう三カ月近く、統計上は港湾からの船積みは順調らしいが、周辺の工場は再開できていないところがほとんどと聞く。

 李克強指数の9月新数字を見ると①用電量マイナス1・8%②鉄道貨物輸出量マイナス5・2%③銀行の社会融資プラス6・3%(季調ずみ前年同月比)。これで6%だの7%だの―。ウソに決まっている。

 

 ただし、中国共産党内では米国派と英独仏派との対立もあるらしい。習金平の団派は欧州列強、江沢民はロックフェラー財閥を通じた米国派。党内の内戦はいまのところ五分五分と聞いた。どう転ぶか。どんな混乱になるのか。

 

 10月13日に終わったイスラム年でカタールの国営ファンドの日本株売りはウソのように終わった。共同して売っていたヘッジファンドも矛をおさめた。

 8~9月の東京株式市場は外人売りが4兆円。それを政府(GPIF,日銀など)が3兆円買い、個人投資家が1兆円買ってあの程度でおさまった。

 

 安保中心の安倍内閣の姿勢も、3兆円の補正予算を国債発行なしで済ます、と、経済、市場重視に変わった。黒田バズーカ3は不発だったが、米FRBの姿勢をみればこれまた当然、カードは温存されている分、強味だ。

 あとはドイツ銀行の不安が残る。CDSをどんどん損切りで売って手元資金を作っているらしい。人員の四分の一削減といいコワーい話ばかり。メルケル首相は何とかどこか身代わりをツブしてドイツ銀行を守るだろうが。マリオドラギECB総裁の量的緩和方針もこの問題をヨコ目にニラんでるのだろう。

 それでも秋の押し目は、買い。私は強気だ。

 

 映画のセリフから。ロシアンマフィアの親分が、息子が車を奪い犬を殺したキアヌの名を聞いて言う。「大変なことをした。その男はエンピツ1本で三人殺した男だぞ。」親分は予想を超える被害をこうむることになる。

 予想を超えて事態は悪化することもある。警戒心を忘れないことにしよう。

 

 

2015年10月24日 (土)

「しんがり 山一證券最後の12人」とやっと越した壁(第797回)

「しんがり 山一證券最後の12人」とやっと越した壁(第797回)
 今週は「ドローン・オブ・ウォー」を観るつもりだったが夜9時半上映で終了11時半。これじゃあ、ねぇ。ヤーメタ!
 そこに知人が「アエラ」で例の「しんがり」の女性版を何回にも分けて清武英利さんが書いてますよ、と。

WOWWOWでのTVドラマ化も日曜ごとに観ている。来週最終回。

 「しんがり」は実名で山一證券の自主廃業の真相を精細に描いたと評判になっている。私も2013年の刊行時にすぐ買って読んでずいぶんと耳新しいことがあった。

 私が証券から銀行の世界にスカウトされたのは1989年4月。巨額な不良資産形成は91年以降だったから私は「飛ばし」は知らない。

 しかし「山一」の首脳には危機を直視したくないという、気弱で無謀なところがあった」とか「(法人営業の)暴走営業は堅気がやることではなく『株屋』と呼ばれた世界のヤクザな商売であった。経営破たんはその帰結だった」。「会社を怪物にしてしまうのは、トップ(ワンマン行平)であると同時に、そのトップに抵抗しない役員たちなのである」。正しい分析、というほかない。

 私はテレ朝のサンデープロジェクトにレギュラー出演していたが、司会の田原総一朗氏が、山一破たんをどう思います?」と聞いたので「昭和40年のときには特別融資している日銀が、元経営者の私財まで提供を迫ったのに、何で今回は甘いんでしょうねえ」。すぐに恐らくドンの命令からだろう。後輩の取締役が私の動きを調べにやって来た。
 そのドン行平次男の先代社長横田良男や中興の祖と言われた植谷久三の各氏の権力を巡っての確執を知っていた私は、「カタギ」でない一面もワカっていた。業界一位から四位になる間に起きたことも。

 また、イマイさん、ゴロ寝のいいわけですか?飛んでもない。私は今回、株価は大事な大事な節目を21日にこえた。少なくとも1万9200円近辺まではかなり速く、2万円の大台突破もさほど遠くのことではあるまい。目先はやれやれで少し安いだろうが。
 それは、どうしてもここひと月近く抜けなかった日経平均1万8468円の9月17日についた高値のカベを、21日に突破したからだ。
ご存じの通り私はテクニカルアナリストではない。しかしシロウトのチャート読みでも6,8月の2万円以上から、9月8日の1万7415円まで下げ、その後戻ってブチ当たったカベが前記の1万8468円だったことはわかる。
 これがまた壁にはね返されてさがったら、9月29日の1万6901円をとりにゆく。怖や怖や。
 では、何かいい材料があるのか。需給面だろう。
 10月第2週。外国人は9週ぶりに買い越し。7,8,9の三カ月で売りのトータルは5兆2370億に達した。買いは9886億円だから差引き4兆2484億円。これだけ売れば外人の売りはもう手持ち玉は相当減ったはず。
 そう見ていたら10月第2週5211億円の買い越し。その後も買っている。

 21日の引け際の上げ幅は、大きかったが、これは毎日の売買高首位が定席の「日経レバ」(日経レバレッジ・インデックス連動型ETF)が引け際の売買の三分の一を占めるためだ。残高8000億円。この平均買いコストが前記のカベであり、これを抜いたということは、買い方の回転が効いてきて、上昇ペースが速くなるということを意味する。
 私は日経レバを買ってみたいと思って聞いたら、16日から設定を一時停止、だそうな。どうせマーケットのことをワカっていないお役人が、やったのだろう。
 黒田バズーカ3、日本郵政上場、第八のクジラ―。買い材料はヤマほどある。外国人とくにHFは11月20日の決算まで恐らく動けないだろう。
 結論。私は強気だ。

 「しんがり」には山一社員のつくったチェッカーズのヒット曲「涙のリクエスト」の替え歌がある。作詞野澤正平(もちろんウソだろう)
 「最後の株価に祈りを込めてミッドナイト役員会
 ダイヤル回す大蔵に伝えてもうダメだよと
 東証のマイクのボリューム上げて初めてひとり
 叫んだセリフ 廃業なんて冷たすぎるぜ ひどい仕打ちさ
 三木が贈った多大な損失、今では違う誰かの債務
 いいや行平と馴れ合いながら 哀しい俺を笑ってくれよ
 涙の記者会見 最後の記者会見
 涙の記者会見 最後の記者会見
フォーユー」

私は日債銀時代たしかスイスで山一の現地支店長に「先週来ていた三木社長が、イマイさんに相場をどう見ているか、聞いといてくれ、と言ってました」と。巨大な不良債権をどうしたらいいか、悩んでいたんだろうなあ。昭和43年、三木氏と選抜されて、ふたりでウオール街にトレーニーとして派遣された時のことを思い出した。いまは故人。合掌。

2015年10月17日 (土)

映画「ワイルドバンチ」と中国ショック2とFRB(第796回)

映画「ワイルドパンチ」と中国ショックⅡとFRB(第796回)

 カゼを引いて、しかも三日間で36冊目の本をまるごと口述。さすがにくたびれたのでDVDで1969年の西部劇の傑作「ワイルドバンチ」を観た。

 有名な殺戮シーンのほかに、男の寂しさが描かれていたのだが私には心にしみた。20世紀早々でもうガンマンや集団強盗の時代ではない。首領パイクを演じるウィリアム・ホールデンが「もう拳銃の時代は終わった。でもこの商売を止めたら何をしたらいいか分からない。」と副将格のダッチのアーネスト・ボーグナインに言う。

 時代に取り残され、年齢には勝てない。パイクが馬から落ちるシーンもある。監督サム・ペキンパーは、その後のさびしそうな背中の演技を絶賛したそうな。

 

 時代は変わる。7,8月の「夏の嵐」は中国主導の世界経済が、米英日の先進国主導に移行しつつある変化で発生したと考える。

 コマツの坂根前会長によると、同社の中国の販売シェア低下は2011年に発生したという。

 米国のシェール革命で国としての復活が見えた年。

 

 私は「シェールガス革命で復活するアメリカと日本(岩波)を早速書いた。採掘現場にも行き「21世紀最大の技術革命(ダニエル・ヤーギン氏)」であることを確信したからである。

 

 中国の経済指標が好転どころか悪化し続けている。9月の輸入20・4%減は、いくら商品市況で減価したためと強弁しても、メチャ悪い数字に間違いない。

 となるとFRBのヘレン・イエレン議長の性格もあり、利上げ実施が年内はもとより来年前半もむずかしい。

 これはまた聞きなのだが、ある英国の編集者の話。FRB議長との対談をまとめた記事にして、ゲラ刷りを見てもらうと―

 グリーンスパンはせいぜい一か所の直しを入れ、バーナンキだと一段落ぐらいの直し。ところがイエレンは何と8回、校正して手直しした。彼女は決断のできない人だ、とか。

 

 イマイさん、今回は何を言いたいんですか?私は先週に続いて今週も相場は売り方の買い戻しで多少株価が上がった程度。マダゴロ寝はつづきますなあ、と言いたいんです。

 

 とくにNYは当分いい指標は出来そうにない。そこへ「少なくとも半年ぐらい利上げなし」の観測が高まると、為替市場ではドル売り圧力が強まる。とくに10月30日の日銀金融政策決定会合で現状維持、となればー。

 いままでの株高のサポート要因は円安だった。しかし円安が円高に振られたら―。

 もちろん、GPIFや三つの共済組合、日銀ETFなどの「クジラ」の買い出動は間違いなく行われている。1万8000円近辺に防衛買いらしきものも。

 しかし、私の見るところ、しばし上昇のあと、中国発か米国国内かの材料で、NYダウの下落が今月末の11月にあるだろう。円高や日銀の現状維持も日本株の場合には足をひっぱるはずだ。

 

 すでに通貨オプション市場でドル円プット主体に短期中心にボララリティ上昇の兆しがある。月末の黒田バズーカ3不発で、円高リスク発生リスクを織り込む形である。あるテクニカルアナリストは115円。別のアナリストは98円。9月の平均119円40銭に比べると円高。企業収益の伸び率鈍化のシナリオを画きやすい。

 ここまでの戻りだと投資家は評価損は少しは減少したものの、まだ買いを入れる意欲はないだろう。上昇している銘柄はショートの買い戻し中心。当分、私のゴロ寝は、続く。

 

 映画のセリフから。立ち寄ったメキシコの村で長老が言う。「どんな人にも子供時代に戻りたい夢がある。悪い事をして来た人なら、なおさら、じゃね」。この映画で村人の歌うラ・ゴロンドリーナ(つばめ)の歌が心を打った。

 米CNBCを見ていたら、ヘッジファンドの廃業のニュースが目についた。22億ドルのベイン、中国で投資していたフォートレスそれにルネサンス・テクノロジー。解約もずいぶんあるんだろう。私の知っているマネジャーはどうなっちゃうかなあ。

2015年10月 9日 (金)

「ラ・マンチャの男」と心配な材料と私の心意気(第795回)

「ラ・マンチャの男」と心配な材料と私の心意気(第795回)
いま帝劇で上演されている「ラ・マンチャの男」は松本幸四郎さんが染五郎時代から1200回以上も上演している傑作ミュージカル。

 16世紀末のスペインのセビリアの牢獄。教会侮辱の疑いでセルバンテスと従者が新入りの囚人になりかけ、周囲から「ドン・キホーテ」の貴重な原稿を火にかけようとする。牢名主に助けを求め、裁判で、それも即興劇の形で囚人全員が演じよう、ということに。

 老人アロンソは騎士道の本の読み過ぎで、何世紀も前の騎士になったと思い込む。従僕サンチヨ・パンサをつれたドン・キホーテは奇行を繰り返す。風車は悪の巨人であり、立ち寄った旅籠は「城」。主人は「城主」で床屋の使う金だらいは「兜」、酒場の女は「姫」。

 この奇行を心配した身内は「鏡」を使って現実に引き戻す。その後のアロンソは年老い、死にかけるが、最期に自分が騎士になった夢を取り戻し「ドン・キホーテ」として死ぬ。

 幕切れに宗教裁判所から呼び出されて牢から出てゆくセルバンテスに牢名主が聞く。「ドン・キホーテはあなたか?」「私もラ・マンチャの男です」。

 

 みじめな現実なのか。理想なのか。「見果てぬ夢」が主題曲だが、何回観ても感動させられる。幸四郎は美声で声量も申し分ない。前回は2012年8月19日の幸四郎古稀の誕生日に1200回目の公演。1960年代から5回も観ている。

 

 私は近く36冊目の本を書くが、長期の日経平均上昇にますます確信を深めている。それは歴史的な上げ相場だった1980年代との共通点が多いことが理由である。ずいぶんとあるがー

 第一は原油価格。1980年代初めにバレル40ドルだったが86年に10ドルを割り込んだ。今回の140ドルから40ドル以下。いまは50ドル近いが。

 

 第二は金融緩和。1986年の公定歩合は5%から87年に2・5%にした。今回は量的金融緩和で「異次元緩和」とか「黒田バズーカ」と呼ばれている。ご存じの通り。

 

 第三は長期安定政権、1986年に当時の中曽根政権は「死んだふり解散」で衆参同時選挙を行い圧勝。今回の安倍政権の長期政権はこれまたご存じの通りだ。

 

 第三は公営企業のIPO。1987年2月のNTT公開が119万円の公開価格が2か月後に318万円となり株式市場への人気を高めた。今回は日本郵政、ゆうちょ、かんぽのIPOがある。

 

 第四は巨大な買い手。80年代を通じて株の持ち合い、生保の政策投資で発行済み株式数の三分の二の安定化があり、そこに特定金銭信託、ファンドトラストの買いがあった。今回はGPIF、三つの共済組合、ゆうちょ、かんぽ。それに日銀のETF買いがある。

 

 そして第五は、あくまでも可能性でしかないが、89年のソ連消滅に似た現象、つまり中国経済の急速な減速。一見マイナス材料に見えるが、中国共産党の一党独裁体制の揺らぎはわが国にはトク。中国ショックの「夏の嵐」と1987年10月のブラックマンデーとよく似ている。あのときは私はロンドンに飛んでいて、着陸後に暴落を聞いた。郊外の美しい城で、100人を超える欧州の機関投資家に「日本は大丈夫」と述べ、その後の急騰に喜んだ記憶がある。

 

 実はこのことは次の36冊目の本で主張するつもりだったが、第一生命経済研の永浜利広さんに先を越されてしまった(東洋経済刊「日本経済黄金期前夜」)。もっと精細に数多くの共通点を指摘している。

 もっとも、現実には心配事が多い。ドイツ銀行は四分の一の行員クビ切りと無配転落。一方米国ではジャンク債の危機が爆発寸前だ。恐らくジャンク債の方で二番底をつけ、FRBは利上げは出来ず、これを横目に見た黒田日銀は恐らく10月30日の展望レポート時の追加緩和は出来まい。だから目先は上昇中の相場ではあるが私は目先の買いはやらないので「休むも相場」のごろ寝を決めこんでいる。

 

 「ラ・マンチャの男」のセリフから。セルバンテスはいう。

 「人生自体が狂気じみているとしたら、一体、本当の狂気とはなんだ。

 本当の狂気とは、夢におぼれて現実を見ないのも狂気かも知れない。

 現実の身を負って夢を持たないのも狂気じゃないのか。

 だが、一番憎むべき狂気とは、あるがままの人生に折り合いをつけて、あるべき姿のために戦わないことだ。」

 幸四郎の言葉だと「夢とは、夢を叶えようとする、その人の心意気だ」。

 うーん、いいことを言うなあ。

2015年10月 3日 (土)

映画「史上最大の作戦」と底抜け株価の今後(第794回)

映画「史上最大の作戦」と底抜け株価の今後(第794回)

 恐らく史上最もカネをかけた戦争映画で、エキストラの兵隊が15万7000人というから凄い。使用された地雷4万個。現実の闘いでは40万個だったというが、これほどのヒト・モノを投下したければノルマンディ上陸作戦のスケールが画にならなかったのだろう。

 原題は「いちばん長い日」で、日本の方はこれのパクリ。独軍の名将ロンメル元帥の名セリフからだ。

 「上陸作戦の勝敗は二十四時間で決まる。わが軍にとっても連合軍にとっても、一番長い日になるだろう」。

 歴史上、確かにこの一日が大転換点になった、という日はある。相場の上では非常にしばしば。

 私が底値と考えていた日経平均1万7400円の抵抗線が9月29日にアッサリ割り込み、1万7000円割れのオプションを買っていた投機筋はウハウハとなった。他の主要市場で底抜けとなった市場はない。どうして?と誰もが不安になる。

 

 私が取材したところ、次のストーリーだったらしい。

 まずニューヨーク。米共和党ベイナー議長の突然の辞任で、ごく目先はともかく11月、12月の米国債務上限引き上げは大難航となりそう。政府の閉鎖リスクは高い。そこで9月28日NYダウは312ドルも下がった。当然、翌日の東京は下がる公算大、とヘッジファンドは考え、売りのストーリーを考えた(らしい)。

 目をつけられたのがカタールの政府ファンド。フォルクスワーゲンの17%を持つ大株主だし、スイスの資源商社グレンコアの暴落で10億ドルベースの巨大損を出し、利の出ている日本株を売却―という「噂」だ。

 本当に売却したかどうかはイマイチだが、少なくとも1万7000円割れのときには市場の一部に、この噂は言われた(らしい)。

 

 チャートで下げ相場を実に巧みに当てる伊東秀広さん(プラザ投資顧問)は、黒田バズーカ2のときにつけた1万6500円のマドを埋めると予想している。そのあたりの安値は一応、あり得ると覚悟しておくべき、ということかな。

 急落が発生すると経験則では「二番底」が一番底の60~70日あとにつく。そして130日ぐらいで高値更新。

 まあ秋の下げは買ってソンはない。これは私の経験則。

 

 不安材料の方はヤマほどあるが、まあ意外性のあるブックスワンは別にして大体株価は織り込んだと考える。

 中国の方も、市場では「不動産バブルと株バブルの破裂」というダブルパンチ説が一般的だが、どうも不動産の方は急回復らしい。

 2014年9月以降住宅市場は下降していたが、大手デベロッパーの万科、保利の販売免責、販売単価、新規土地購入、みな4月以降急上昇。これは3月に行われた住宅ローンの頭金比率引き下げ、中古住宅転売の税軽減などが効いている。北京、上海など一級都市に止まっているが次第に拡大中とか。

 アナリストに聞くと「何でもあり」。不動産は関連産業への波及効果を含めるとGDPの四分の一。土地収入に頼る地方政府への影響も大きい。4~8月で住宅着工は18%増。だから、中国破滅説は、まだまだ。

 

 今週前中国大使丹羽宇一郎さんの「中国は崩壊するか」というお話を伺う機会があった。もちろん、お立場もあるから「共産党一党独裁は崩壊しない」しかしー

 「あと5年から10年先だろうが、中国は連邦制に行く」

 「中国経済はいまガタガタさわいでいるが、永い目で見れば大した変動じゃない」

 「問題は中国人自身が自分の世界での地位を自覚していず、自分がクシャミしたら、世界がどう反応するか、ワカっていない」

 一番コワかったのは「ツキジデスのワナ」のお話し。覇権国の力が衰え、しかも新興国が興隆したときの戦争だ。

 新興国が既成秩序に挑戦することは史上たびたびあり、1600年から、15回。うち11回は戦争になった。「私も心のスミでは、ひょっとして―と思わないではない。」と丹羽氏。

 

 このツキジデスのワナを指摘したハーバード大学のグレアム・アリソン教授はFT紙に「米国はNO・1は自明の理と考えるが、中国の興隆は英国の産業革命と比べると規模は100倍、速度は10倍だ。ペロポネソス戦争はアテネの興隆に対するスパルタの不安から。歴史は繰り返すか」と。

 

 話を戻す。日経平均はこの10月上旬が下値調べ時期だが7日の安倍内閣改造、党首脳部人事が終了すればいよいよ経済重視、市場上昇の時期に入る。量的緩和があるかないかは大問題だが、補正予算はあるし日本郵政株公開もある。

 NY市場の方はジャンク債、ドイツはVWとドイツ銀行問題がある。第二のリーマンという声もあるが、ジャンク債の方はともかく、ドイツ銀行は国家の威信にかかわるのでメルケル首相は必死になって何とかゴマかすのではないか。VWはオウンゴールだから仕方ないが。

 結論。日経平均の底値から戻り高値更新が見えて来るにはもう少し時間が必要だ。

 

 この映画の最後のセリフ。行軍の最中迷子になった米歩兵が、負傷して動けないままでいる英空軍将校に言う。「どっちが勝ったんでしょう」。何か大きい歴史的事件の最中は、なかなか全体図は見えない。まあそんなもんだ。

 

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