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2016年5月27日 (金)

映画「マネーモンスター」とソロスと習近平とトランプ(第828回)


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映画「マネーモンスター」とソロスと習近平とトランプ 2016・5・29(第828回)

 「羊たちの沈黙」のジョディ・フォスターが監督し、ジュニア・ロバーツとジョージ・クルーニ―が主演するサスペンス。6月10日公開予定。試写で観た。

 舞台は大手TV局のスタジオで全米高視聴率の財テク番組(ディレクターはロバーツ)「マネーモンスター」を生放送中。番組のセットに暴漢が侵入し、司会者リー(クルーニー)にピストルを突き付け体に起爆装置を巻きつける。この犯人は番組で推奨していた銘柄を投資して全財産を失った。時価総額下落分6億ドルを用意しろと―。犯人は株急落のからくりを世間に暴露するのが真の目的だった。

 ここから話は急展開、ネタバレしたくないからやめるが、犯人を狙う警察の狙撃手がうつかどうかがスリルあるカギになる。不安とサスペンスが続く。

 

 不安材料はヤマのようにある。文字通り世界中に。

 先週、ソロス・ファンドの1~3月期の投資実績が発表された。金のETFの買いオプション、世界最大の産金鉱山株バリック・ゴールドの株購入が話題になった。

 私はS&P500の売りオプションの量を倍増させたことを注目している。間違いなく、2月のダボス会議での「中国経済のハードランディング」発言が背景にある。

 加えて5月9日の人民日報に掲載された習近平主席又は非常に近い人物(ブレーンの劉鶴氏)の李克強首相や国務院、地方政府、中国人民銀行への批判記事がある。1、2ページのほとんどを割き、記者の対談相手は「権威人士」、これは毛沢東が使ったペンネームだった。習近平本人の指示でなければ人民日報にこんな扱いはしない。

本当に習近平が権力を握り個人崇拝に近いほど大切にされているなら、こんなことはするはずがない。50年前の毛沢東が文化大革命で、劉少奇やトウ小平を失脚させ権力を再び握った事態を思い出させる。

これまでは中国経済指標や過剰債務、国外への人民元流出に一喜一憂していたが、共産党内部の権力闘争がこれに加わった。しかもこの動向は外部からはうかがい知れない。中国発の世界への巨大なショックのリスクは高まっている。ソロスが売るわけだ。

今週は大ビックリだ。カネを賭けているWEBサイトのベットは5月25日まではトランプ必敗。ところが26日に米国務省監察官の報告書が公開され、ヒラリーを厳しく批判し、逆転してしまった!

ただ内容をよく読むと、個人メールばかりを使っていたのはヒラリーだけでなく、コリン・バウエル元国務長官もやっていた―とか。批判は(WSJ5月26日)はげしくない。

よく分からない。5月7日付でCNNがFBI高官の話として「ノー・クリミナル・ロングドゥイング」と結論付けたのが記憶に残っているからだ。しかしこれでトランプ大統領の悪夢は否定しがたい。そうなれば大変だ。米国孤立主義がとられて親米国の国がみんな打撃を受ける。たとえばNAFTA参加国のメキシコとカナダ。TPPもダメになる。瞬間私は円高を連想した。

 

伊勢志摩サミットは大方の予想通りG7の合意は得られず玉虫色の声明だけ。

となるとイマイチな日本の景気に絞られる。強気の野村証券でも2016年度はプラス0・7%と3月比0・1%減額修正。まあ財政出動と日銀の追加緩和の催促となる。BREXIT、米国利上げ、それに中国と消費税。放っておいたら景気指標は悪化、外国人投資家の日本離れは加速する。6月1日に安倍首相がどんな声明を出すか。

たよりは株式市場の古い言い伝え「閑散に売りなし」。1日の出来高が2兆円を下回って久しい。下値の方は1万6500円。上値は1万6800円でここが抜けない。何か材料が出て壁を抜けるとスッと1万8000円ぐらいに行くのだが、やはり中国リスクとトランプ・リスクが頭を押さえているのか。

私は大型補正と財投債や永久債(アベノミクスの限界が言われてしまうので、総選挙後)を期待するが。安倍首相の決断次第だ。

内閣支持率+政党支持率の「青木比率」でみると、安倍政権は圧勝こそしないがそこそこの勝利は固い。

2016年という年。いろんな意味で大きな転換点に立っている気がする。

 

映画ではマネー番組らしく司会者はいろんな教訓を言う。「株は需給で価格が決まる」「儲けたければ、他の人より早く動くのが秘訣だ」「金だけを信じろ。人を信じちゃダメだ」。流れが変わったら素早く乗りたい。

 

先日ご紹介した6月5日(日)の講演会は定員を早々とオーバー!ありがとうございます。

 

 

 

2016年5月21日 (土)

映画「殿、利息でござる!」と安倍首相の逆転の発想(第827回

 

 磯田道史さんの「無私の日本人」を中村義洋博監督が映画化。羽入結弦が伊達藩の殿さまとなって登場するサプライズがあり、しかも存在感が圧倒的なのが話題のヒット作。

 宿場町で隣の宿場から藩の物資を受け取り次に運ぶ「伝馬役」を負っていた。普通なら藩から助成金が出るのだが、舞台となる吉岡宿は仙台藩の直割でない。そこで馬の購入や人足の雇い賃など吉岡宿町人の自腹。重い荷役に耐えかねて夜逃げが続出するという悪循環だ。

 何とかしなければ、と考えた町の造り酒屋は、藩に大金を貸し付け、その利息で吉岡宿を救おうという前代未聞の計画を推進する。有力者たちが皆私財をなげうち1000両(三億円)を作るがー。

 百姓や町人が搾取される側から搾取する側に回る逆転の発想。私は安倍首相が「G7版三本の矢」で決断するかどうかわからないが、こうした発想の転換を現在求められていると思う。

 

 いまの日本の通貨当局は円売り介入したいところだが極めて難しいジレンマ状態だ。安倍首相はG7を控えて日本が介入に動くことは、国際的な経済協調を阻害するのを控えなくてはならない。またTPPや大統領選挙もあり、日米関係は極めて敏感。米財務長官の発言も重い。

 そこで日本側としては財政出動恐らく真水10兆円級の大型予算と構造政策、それに消費税無期延期をG7近辺で発表することになる。

 その場合、財政再建が遠のくという理由で日本国債の格付けの引き下げがある。日本企業の外貨投資ニーズのコスト高につながり、好ましくない。

 そこで海外のマスコミは「ヘリコプター・マネー」の導入がこの窮状を救うとみている。2月に英エコノミスト、4月16日にはウォールストリート・ジャーナルが日銀黒田総裁を直撃して、ヘリ・マネー導入の意向を聞き出そうとした。当然ヘッジファンドのマネジャーも注目している。

 私は現在10年もの国債金利がマイナス0・1%なのを利用してゼロ金利の財投債発行が一つの案と考える。

 財投債はインフラ整備を対象に政府が発行するが政府系金融機関を通じて民間に貸し出されるので国債と違い政府債務にならない。もう一つは私が823回で書いた借り換え債の永久債化。6年間年間100億円の永久債発行分の利払いコストはゼロ。6年合わせて消費税4%分に当たり、6年間7兆2000憶円の財源は浮く。第一、タンス預金に行ってしまいそうな余剰資金は相続税贈与税ゼロの魅力で吸収できる。

 1月29日のマイナス金利決定から半年は効果をみたい、というのが黒田日銀総裁の発言だ。これを信じれば7月29日の日銀政策決定会合だが、私は6月16日の可能性もある、と見ている。本当なら11月8日の大統領選が終了した後ワシントンがガラガラになる時がいいのだが。

 このプランを発表するだけで円安株高ストーリーは復活する。さあ安倍さん、黒田さん、どうなさる?

 映画のセリフから。目論見は当たり、藩主伊達重村は造り酒屋にわざわざやって来て「寒月」と自ら筆をとって書いて「“これ”をもって酒銘とせよ」と言い残す。大変な評判となり、財産をほとんどなくしていたがこの酒屋はつぶれずにすんだ。

 

 オマケを。トランプが当選したら―という記事や番組を最近よく見かける。誰もバクチのWEBを見ていないらしい。ヒラリーはカケ率1・4、これに対しトランプは4倍台。通信社の世論調査はあまり信用しない方がいい。カネをかけている人たちの見方を私は信用する。

2016年5月14日 (土)

映画「復活」と安倍政権の今後とトランプとヒラリー(第826回)

映画「復活」と安倍政権の今後とトランプとヒラリー(第826回)2016・5・14

 5月28日公開予定のいわゆる聖書もの映画で2月に米国で公開されヒット。試写で観たが「ベン・ハ―」などと違いイエスキリストがセリフを語る。

 もちろん舞台は古代ローマのエルサレムで、十字架刑にした司令官クラヴィスに、イエスの遺体が消えたとの報告が届く。市民の動揺を鎮めるためローマ総督ピラトは調査を命令し、弟子たちの隠れ家に踏み込んだクラヴィスは呆然とする。自分が命令して十字架上で死を見届けたイエスが、弟子たちと談笑していたからだった。

 四つの福音書にはイエスの誕生について語らないものが二つある。しかし復活について四つすべてが記している。キリスト教信仰で「復活」はこの上なく重要だ。クラヴィスが復活したイエスと話し、教徒になるという結末になっている。

 

 今週、為替レートは小幅の円安、日経平均は週間ではまあ横這いだった。市場は近く出るだろう財政・構造改革の政策待ち。例によってヘッジファンドは6月の次の日銀決定会合でのヘリコプターマネー(永久債?)を期待している。目先は自分たちの5月20日の中間決算で頭がいっぱいだろう。

 となると関心は5月26,7日のサミット後の安倍首相記者会見とオバマ広島訪問。これは内閣支持率を確実に上げる。衆参同時のほうは可能性は少ないだろうが、7月10日参院、8月解散の時間差攻撃は首相の頭にあるはず。消費税先送りはジョーシキだろう。これが解散で民意を問うテーマになる公算大だし。

 私はアベノミクスがもうダメという一部マスコミの見方には反対だ。岩盤規制への風穴は着実に明けられつつある。構造特区とコンセッションがキーワードだ。

 百歩譲って目立った成果が経済指標になって現われていないにしても「復活」は近いと思う。選挙で勝利し長期政権が確実になれば「風穴」は大きく拡がる。まあ、来週は今週よりはマシと思う。

 アレレと思うのが米国大統領選。5月12日のロイター支持率調査ではヒラリー41%、トランプ40%。先週の48%対35%が急接近した。

 13日には共和党のライアン下院議長と意見調整のため会談したが、予想通り45分でカタのつく問題じゃない。共和党は分裂する可能性がある。党有力者は党大会をボイコットしているし、ライアン氏自身がトランプ候補確定の日にCNNで「私はトランプ氏を支持できない」と発言した。一方トランプ側もライアン氏を党大会委員長から外す」と脅しをかける始末だ。

 ヒラリーの方は副大統領候補にこのコラムでも取り上げたエリザベス・ウオーレン上院議員という女性コンビ。ヒスパニック期待の星カストロ住宅都市開発長官も。

 ヒラリー有利の背景はオバマ支持率が50%近くに上昇していること。今狙っているのはISISのバグダディ容疑者殺害、今週ホワイトハウスでの米ロ北欧サミット、9月の国際難民サミット、それにベトナム訪問、広島訪問。レガシーづくりに熱心で、特にバグダディ殺害が成功すれば打点になるだろう。

 トランプには税務署に提出した確定申告の資料公開をマスコミは迫り、これがどこかの国の都知事みたいな足のひっぱり効果がありそうだ。副大統領候補に「5,6人」と言っている程度だし。

 

 映画のセリフから。イエスがクラヴィスに言う。「何を求めているんだ。家族か、平安か、死のない生活か」。私は無神論者だが、心からタイムマシンがあればイエスが処刑されて三日後に復活したのをこの目で見たいと思う。そしたら神に信じられるのに。

 ここ何週間も週一の割で知り合いや同年の人が亡くなる。信長じゃないが「死のうは一定」。毎日を一生懸命生きる―。これしかないんだろうなあ。

 このブログ。私の重要な仕事です。どうぞご声援ください。間違ったときの罵声も歓迎です。反省の材料にしますから。

 

なお、6月5日(日)に私と二人のゲスト(大井幸子さん、伊東秀広さん)をお迎えして講演会を開きます。定員200名。お申込みは次のアドレスに―

http://v6.advg.jp/adpv6/r/7py_12of

2016年5月 6日 (金)

映画「追憶の森」と円高株安の今後(第825回)

映画「追憶の森」と円高株安の底値(第825回) 2016・5・7

 ガス・ヴァン・サント監督の映画はどれも見応えがある。「ミルク」「グッド・ウイル・ハンティング」-。彼が有名な「ブラックリスト」(きわめて高い評価を得ていながら制作されていいない企画)を脚本にしたのだから、深みのある大人の鑑賞に耐える映画にした。

 主な出演者は三人。富士山麓の青木が原で自殺しようとしている米国人アーサー(マシュー・マコノヒ―)と、出口を求めてさまよう日本人タクミ(渡辺謙)、それに死んだアーサーの妻ジョーン(ナオミ・ワッツ)。

 森の中での二人(演技合戦が見もの)の会話から、これは自殺の映画ではなく生きる物語であり、さらに愛の物語であることが次第に分かってくる。タクミの妻子の名、岩に咲く花、「楽園への階段」という言葉、「ヘンゼルとグレーテル」。ひとつひとつが最後につながって感動を呼ぶ。一ひねりも二ひねりもしてあるミステリー映画だ。感動的な。

 

 出口が見当たらない青木が原の森のように、今週来週は円高と株安の悪循環に東京市場は陥ったように見える。

 それはそうだろう。4月29日に米国財務省は為替報告書を発表した。今回は2月に成立した「貿易円滑化法」に基づく最初の報告書で、中国、日本、韓国、台湾、ドイツの五カ国を同法に基づく監視リストに載せた。

 しかもこの報告書に先立ってルー財務長官は「為替市場は秩序立って行動している」として、日本の円安介入を許さない含意の発言を行っている。

 コスト112近辺で円買いをしていたヘッジファンドには千人力万人力の援護射撃で5月3日に1ドル105円。ニッコリ利食いの水準まで進んだ。

 輸出企業への打撃は大きい。2016年度平均1ドル106円だと1兆6300億円の営業利益押し下げ要因になる。先週予告した通り5月2日に一時1万6000円の大台を割れ1ドル105円にも瞬間タッチした。

 5月6日はまあ横這い。小幅だが円安。しかし、完全な底値は先延ばし、と私は見る。

 というのは、円が目標値に達したが、不十分。理由は次の通り。この円高株安は熊本地震に関連がある。ヘッジファンドの運用担当者のロジックはこうだ。

 大きな震災損失発生→日本政府は手持ち米国債(1兆2000億ドル)を売却→円高ドル安の発生。

 このロジックで2011年の東日本大震災当日の82円が、一時76円25銭まで円高、株価も1万1000円近辺から8100円近くまで下落した。

 さて、今回のブログのキモは次の通り。

 1ドル105円55銭(3日)が円高の天井で5月2日が目立つ株価の底値だった可能性はそれほど大きくない、ということだ。

 この為替の専門家で、円安の天井で「これ以上の円安なし」と予測していた“当たり屋”の見方をご紹介しておこう。シティバンク証券のチーフFXストラテジスト高島修さんだ。この方は前から2014年12月か2016年2月にかけて形成したヘッドアンドショルダー、つまり2012年以降の長期ドル高円安は終了した、と主張。下値のめどは1ドル105円、とも。ただ、引け値で105円がつかないと確認にならないと思う。

 一方、日経平均の方も、もう少し下がつかないと。これもテクニカル・アナリストの出番だが、2016年転換説を主張していた三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ・テクニカルアナリスト宮田直彦さん。5月2日付でこの日の大幅下落を予想し「サポートを1万5705円、5月6日にこのラインを割り込む場合は4月8日安値1万5471円が試される。」とも。

 

 私が円高については、高島修さんの別のレポートを注目している。今回の米財務省の報告書で為替介入について「名目GDP×2%」という具体的な数字を示したこと。見方によってはその範囲の介入は問題視しないというメッセージと読める。一般に言われている見方と違う。

 もちろん「米国が日本に臨む財政策と構造政策が打ち出される」ことが前提となるのだが。

 ルー財務長官はたしかに円売り介入に警告を送っているが、高島さんは「昨年のような批判めいた調子は薄れた」と指摘している。そこで「経済対策の発表後も円高に歯止めがかからないなら、円売り介入も」と結論付けている。ただし、円売り買い介入を「リスク」としているのだが。

 結論。105円、1万5000円大台が当面の底。ヘッジファンドの円買い買い戻しはもう始まりかけているが本格化はもう少し先だろう。

 映画のセリフから。アーサーが言う。「よくあるだろう。人生を変えるような大きな瞬間。何が大切か気づく瞬間だよ」。相場も同じ。

 私は今回、当たり屋の意見を中心に申し上げたが、私は外国人投資家が2016年1~3月で5兆を超える売り越しだったが、4月は3週間で9500億円買い越したことを注目している。

 一方為替は安倍首相の5月5日ロンドンでの記者会見で質問に答えて「急激で投機的な動きがある。為替の安定が望ましいし、必要に応じて対処してゆく」と述べた。「秩序」が見られないという発言もあった。ヘッジファンドの連中はヒヤリとしたはずだ。ただ、安倍さんには内需振興政策という渡るべき川があるが。Tsuiokunomori
ここまで書いてきて今7日の午前4時だが、大事な情報が入ってきた。CNNが例のEメイルゲートの調査を終了、なんら違法行為はなかった、と報じたのである。これでドナルド・トランプ大統領の悪夢はなくなった。WSJはヒラリーの勝利の確率は70%と報じている。日本にとっては朗報だ。

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