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2016年11月27日 (日)

映画「シン・ゴジラ」とトランプ・ショック(第853回)2016・11・27


映画「シン・ゴジラ」とトランプ・ショック(第853回) 2016・11・27

 19日から25日までの短期間、NYに行ってきた。この間、実働三日だった。会った人も多いが、電話をかけまくって取材した。ずいぶん実り多い出張になったと思う。

 トランプへの政権交代期だったし、17日の安倍首相との会談が話題。一方NY株価は連日新高値更新にわいていた。機内の映画で「シン・ゴジラ」を2回目だが見てトランプってまるでゴジラじゃないか、と思った。

 

 始めは「巨大不明生物」で専門家は「足がない水上生き物が地上に出てこない」と見当違いのことを予測。

 一方防衛大臣は民間人への被害を恐れて自衛隊出動をしぶり結局出動したのだが、線路上に避難している老人を見てやめてしまう。

 米共和党の主脳がトランプ阻止の手を打てないまま、アレヨアレヨという間に党大会を制し、大統領になってしまった。ヒラリーへのFRBの調査というフォローの風に恵まれたのが大きかったが。

 そのうちにゴジラは①知能が低いどころか人間の8倍の遺伝子を持つ②体内のエネルギーは核分裂。「荒ぶる神」という意味の名前がわかる。さあ大変。捕獲だの駆除だのという予測が空振りで、国家の存立を揺るがす大事件であることも分かってきた。

 

 トランプ反対がすごいことは、NYに到着してタワーの前の市民のデモや警護体制を見てわかったに、ワシントンの情報筋に聞いたら組織の抵抗がすごいことも。

 

 国務省としては、国と国との関係が勝手に急変するのは困る。またトランプが30数カ国の首脳と電話会談し、安倍首相と会ったりしているが、国務省はカヤの外だった。

 

 政権交代直後に大使はみな形式的に辞表を提出し、次期大統領が受理すれば辞任、認めなければそのままというのが慣例。辞表を出すな、という訓令はトランプに「さあ、あなたの手持ちの大使候補のカードがそんなにありますか」というブラフかも。だからこそ国務長官にミット・ロムニーを担ぎだそうとしている。普通は、受けない。いつ後ろから矢が来るか分からないから。

 

 現地で聞いたのだが、やはりトランプと氏の事業との間の「利益相反」は問題だ。アルゼンチン大統領と電話したのはいいが、すぐ現地でのホテル建設の認可が出た、という。やはり、いつの日か大問題が起きるに違いない。

 

 ヘッジファンドの運用担当に聞くと、「ウワサで買って現実のニュースで売ルサ」。つまり1月20日の就任式とその後のハネムーン期間ぐらいはNYダウの「高値更新に決まってる」。とくに12月の決算期末までは「連日高だろう」。理由はと聞くと減税、減税、また減税。「アメリカの投資家は減税大好きだからね。」

 

 買い手の出遅れ感が1月に入り上値でも買い出動するから、そこへブッければいい、という読みだ。なぜか。年金、財団など長期投資家は、11月の投資委員会で方針を決めて新年に臨むのが通例だ。しかしやはりトランプノミクスの危険性を不安がっているのと、投資委員会のメンバーが大物でスケジュールが取れなかったりで委員が集まらない。

 

 「もともと小回りの利かない長期投資家はほとんど買っていない」というのはどうも本当らしい。債券から株への転回説もうなづける。

 

 NYはわかった。日本は?

 有力ヘッジファンドのアナリストが「米国が中心だが、日本株も買いたい」。なぜ?と聞くといまのEU、中国をみるとよほどの物好きじゃないと買えない」。そうか、消去法か。

 もちろん円安による輸出企業の利益予想上昇、金利上昇の効果期待の金融株買いなど。収益見込むストーリーもしっかりと出来ている」。

 

 ただし、ある取材先で「トランプ・ショックは起こり得る。しかも日本が狙い撃ちになる」という見方も聞いた。あと17日の話し合いに関するニュースも。ここいらは来週にしよう。疲れた。81歳なんだからカンベンしてください。

 

 映画のセリフから。原爆を投下してゴジラを殺すという米国や国連のタイムリミットが近づき、ついに冷凍して体内のエネルギー発生を停める作戦をとる。米、ロ、中は原爆派ので、フランスを抱きこんで時間稼ぎをする。これを聞いた米外交官が言う。「外交はもともと狡猾なものだが、日本がそこまでやるとは」。外交の大事さがよく分かった1週間だった。

 

 

2016年11月13日 (日)

映画「E.T.」とトランプ大魔王と円・株と投資作戦(第852回)

「E..」とトランプ大魔王と投資作戦 (第852回) 2016・11・13

 スティーブン・スピルバーク監督のSF傑作で、EXTRA―TERRESTRIAL地球外生命体の名称で、1982年当時日本でも米国でも最大のヒット作となった。

 

アメリカのとある森に宇宙船が着陸し、宇宙人が数人でてきたが、何者かが着陸したことを察した人間が接近。宇宙船は離陸するが遠くにいた宇宙人一人が地上に取り残される。

 

 ここから先はご存じだろう。父親が愛人と去ってしまって動揺しているママ、兄と幼い妹の間でひとりぼっちの主人公エリオットが宇宙人と遭遇する。そして宇宙人は一家と仲良くなってゆく。一方科学者たちはかくまわれていることを察して連れ去るが、宇宙人は死んでしまう。

 死体は冷蔵されるが、そのせいで宇宙人は蘇生しエリオットたちは科学者から盗み出し、自転車に乗せて逃げる。自転車で空を飛ぶシーンの美しいこと!(あの自転車は日本製です。また原案は「ドラエモン」です。ご存じ?)

 

 トランプが勝った。日本では「未知との遭遇」だと騒ぐ。E..に初めて会った少年のようだ。たしかにこの人は何を言い出すか分からないし、日本との関係ではTPP反対、日米安保条約をひょっとすると破棄―と不安に。だから大幅に株は下げ(9日)、その日のNYダウの上昇をみて上げた。安倍首相の17日の会談で不安は少なくなったが、円レートの方も一時円高で101円台に振れ、その後106円台。両方ともジェットコースターのようだ。

 

ヘッジファンドが円買い日本株売りをしたのが9日、その夜NY株は先物で700ドル安だったが寄付きがしっかりだったので、慌てて買い戻し。要するに株も為替もショートカバーで動いた。(株の方はGPIFや日銀の買いが入るが)。リスクオフの世界でニューマネーが入ってくるわけがない。

 

日経平均に話を絞る。ここ何ヵ月もの広義の持ち合い相場で、一ぺんは大きく下押さないと上へ相場は行かない。もう一度、何か起きて駄目押しを入れて1万5000円台の上の方で止らないと私は確信が持てない。

 

それでも、トランプ大統領の誕生でドルが反発に転じた。と強気の方はおっしゃるかも。

 

シティグループ証券の高島修さんによると「シティFXポジション指数はヘッジファンドなどの米ドルのロング、と円ショートがさほどたまっていなかった。一方長期投資家がトランプ・ドル安リスクをヘッジしたまま11月8日を迎えた。第三に日本の輸出企業のヘッジ比率の正常化がようやく終了。」などドル高要因を列挙している。為替からリスクオンに変化する例はあることはあるが少ない。

 

 私の結論は、選挙前に懸念されていた数々の不安は、まだ何一つとして解決していない。ところがマーケットは早トチリして、トランプとその政策の明るい部分だけを拡張解釈している。

 

どこかで、それ見たことかという何らかの事件があった場合、ドル価値も株価も「調整」する。すぐに年末1万8000円とか9000円とかの楽観論は同意できない。

 

大和総研の11月9日付の緊急レポートで「トランプ・ショックでリスクオフによる世界的な株安と急速なドル安の動きを警戒すべき」とした。また「米国GDPの1%低下、リーマンショック級の株安、円高を想定した場合、日本の実質GDPは0・71%押し下げられる」とも。

 BREXITの例を見ても一旦底入れしてまた下押す。これも大和の木野内栄治さんは下値メドとして1万5000円台を下値イメージとしている(11月9日付)。

 

私は11月19日に渡米し、1週間で帰国。その間に現地でいろいろと取材してきます。

 来週はこのブログはお休み。ボイスメール「相場のウラ読み」の方は週末にお届けします。

 

 ともかく米国の高級官僚3000人がオバマ→トランプの政権交代で職を失う。また米大手メディアの幹部、民主党系シンクタンクの人たちも混乱しているはずだ。一種の地殻変動だから。

 

 今回は映画のセリフでなく、TVで私が感心した石破茂さんの発言を。

 「小泉純一郎さんが政権をとるとき、自民党をブッつぶすというセリフで総裁選に勝った。総理になったら組織をまとめるのに全力を挙げた。『地位は人をつくる』だよ」。トランプも勝利宣言のスピーチは“らしい”ものだった。トランプのホームページのこの人の公約は現実になるか、どうか。おっかないことがずい分と書いてあるが、バカじゃないからほどほどに止めるだろう。現にヒラリーを告発しジェイルに、と叫んでいたが、もうその気はないようだし。

2016年11月 5日 (土)

映画「サイコ」とまさトラリスクと円・株(第851回)


映画「サイコ」とまさトラ・リスクと円・株の今後と戦略(第851回) 2016年・11・6

 アルフレッド・ヒッチコックのご存じの名作。先日衛星放送で「ベイツ・モーテル」というシリーズがあった位、もうホラー映画の「大古典」となったのだろう。

 

 お話は有名なので簡単に。OLのマリオン(ジャネット・リー)は大金を横領し車で逃げる。大雨で道に迷いモーテルに泊まったが、シャワーを浴びている最中に突然、得体のしれない何者かにナイフで襲われ殺される。観客にとり大ショック。その後も息苦しくなるほどの恐怖が忘れられない。

 最後に精神科医が言う。モテルの持ち主ノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンスが名演)の体の中に彼自身と年老いた母親が同居していた、-と。マリオンの殺人は息子が惹かれたので母親が嫉妬して犯行は行われた。

 

 映画のラストシーン。母親がノーマンを完全に支配し、声まで老婆に変わり、若いノーマンの顔がミイラになっていた母親の顔に変わってゆく。いま思い出しても、コワーい。

 

 先週、私はFBIがヒラリーのEメールゲートを蒸し返し、展開次第でトランプ・ショックの可能性も、と指摘し、当面慎重な投資方針を主張した。私の予想通りではないか。

 きっかけはABCTVの世論調査で、トランプが1%ヒラリーを上回ったと報じられたこと。以前から心配されていた「まさか」が現実になる?「サイコ」で第一のマリオン殺害が次に何が起きる?と観客を恐怖に陥れたように。リスクオンからリスクオフに、投資方針が一斉に転換した。私はまだヒラリーと考えているが。

 

 誰もが考えるのは、大手証券会社や著名エコノミストが「トランプになったら大変」という予測。

日本に関する部分、つまり為替レート。共和党がトランプ勝利とともに上、下両院で多数を維持した場合は米国金利は上昇(「低金利はオバマの失策!」)。保護主義など、本来はドル高だが、現実にはドル安(円高)が強行されるとの不安が高まる。

 

 ある為替の専門家は「クリントン勝利103~106円、トランプ勝利102~108円」のイメージを予測。現にここ1カ月のFBIの調査開始前は円高リスクを先物取引などでヘッジしていた投機筋が巻き戻しを始めていた。ドル円のベーシススワップ(米ドルプレミアム)も急速に縮小。しかし支持率一部逆転の報が出てからまたリスクオフに戻りかけている。週末には102円に。BREXITのときの「専門家」の予想を思い出させる。

 

 日本株はどうか。トランプ登場なら、世界的株安つまりリスクオフが発生するだろう。新興国通貨は一斉に売り圧力が増大、とくにメキシコ・ペソは大打撃が起きよう。

 日本株は11月2,4の2日で日経平均530円安、日銀が毎日ETFの700億円以上の買いを入れても、リスクオフの流れを止められなかった。

 

 テクニカル・アナリストは、下値のメドを一目均衡表の転換線1万7059円、21日移動平均1万6903円までの調整が(はっきり言って甘いと思うし、もう大台は割れた)上昇トレンドが変わらない小幅調整。200日線の1万6600円近辺でサポートと見ている。トランプが現実に当選したら、そんな下げ幅で済むかどうか。逆に言うと、そこらで止れば年末から大相場だが、そううまくいくか、どうか。

 

 というのは米国経済の先行き不安。ローレンス・サマーズ氏が言うように「トランプ大統領ならもう8年続いた好況は終わり、遅くも18か月後に大不況に突入」とすると米国株は相当下がる。2-3000ドルは下がるだろう、と伊東秀広さんは言っている。

 欧州はBREXITの影響でダメ、中国はまあマトモな投資家なら本気でやる人はいない。何せBRICSが(ブラッディ・リディキュラス・インベストメント・コンセプツ)とからかわれているご時世だ。残るは、日本しかない!

 

 グラフをのせられないのは残念だが、世界で対外貸し出しを伸ばしているのは日本だけ。十分な資本蓄積、高い技術と開発力、強い製造業をキープしながら海外売上高比率50%という日本の強味が再確認されること確実だ。

 

 私は先々週以来、長期強気だが目先は慎重に、と繰り返し主張してきた。ここ何日かの円高株安で、一部で云われていた目先目標1万8000円、107~8円は見事にフッ飛んだ。だから言わないことじゃない。

 イマイ先生、何かハラに一物あって目先弱気を言ってるの、と問い合わせがあった。「弱気」でなく「慎重」です。お間違いないように。

 ご質問した方は、恐らく「サイコ」で殺されてしまう探偵(マーチン・バルサム)のセリフのような方かも(失礼)。

 「探偵というのは、正直者と言われている人物ほど疑ってかかる商売です。」私は世界中にあるブラックスワンを忘れていないだけです。クリントン当選なら、円安株高に戻る、とお考えの方は、とんでもない間違い、と申し上げる。ドナルド・トランプが「不正選挙」を言い立てて、当分大混乱が続くシナリオの公算大なことをお忘れなく。またリスクオフに回復するには時間がかかる。前から言っていた「大魔王」はNY株とワシントンにいた。いま、やって来ているとみる方が自然だ。

 

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