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2017年4月23日 (日)

映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」と金正恩と籠池、ルペン(第855回)

映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」と金正恩と籠池、ルペン(第855回)2017・4・23

 ことし80歳のケン・ローチ監督の傑作でカンヌ映画祭でパルム・ド-ル賞を獲得した。英国の地方都市ニューカッスルが舞台で主人公は妻に先立たれ一人暮らしの59歳の大工。

 映画は主人公と女性職員とのやり取りから始まる。ブレイクが受けている支援手当の審査を受託している民間企業の職員だ。

 「帽子をかぶるくらい腕は上げられますか?」「手足は悪くない。カルテを読めよ。悪いのは心臓だ。」「電話のボタンは押せますか?」「悪いのは心臓だ。指じゃない。」「簡単な事柄をひとに伝えられることは?」「心臓が悪いのに伝わらない」「態度は審査に影響しますよ!急に我慢ができなくなって大便を漏らすことは?」「こんな質問が続くと漏らすかもな。」

 ブレイクが仕事中に心臓発作を起こしてドクターストップがかかり、支援手当受けに来た。しかしこの会話の結果、数か月後に「就労可能で支援手当は不要」という通知が届く。

 ここからブレイクの苦難が始まる。不服申し立てをするためには、義務的審査の申請が必要だが、それには何週間もかかる。そこで、手当てを得るためにとりあえず求職者手当を申請し、病気で仕事を止められているにもかかわらず求職。そのためには履歴書が必要とされ、今度はパソコン講座に参加義務が課せられる。マウスなんて持ったこともないのに。

少しもわかってもらえないという焦燥感。北朝鮮の独裁者金正恩の心境はこのダニエル・ブレイクに近いのではないか。核開発と燃料の固形化、小型化、それにミサイルの長距離化を委員長就任以来5年間、自らの威信をかけて推進してきた。それが米国の政権が、何もしなかったオバマからトランプに変わった途端「周囲の脅威」とされて「核をやめろ」と騒ぎ始めた。

頼りにしてきた中国も、米国のいうことを聞き始めた。石炭の輸出が止まった。中国の常務委員級のナンバー3、5,7は江沢民派(石油閥)だったが、党大会で三人とも引退してしまう。ではマンギョンボン号をロシアに月6回就航させて助けを請うが、やはり中国が助けてくれなくては―。

まあ金正恩の心境をまとめてみると、こんなものだろう。恐らく16日に中距離ミサイル発射(失敗したが)に止めて、核実験は止めたのは、中国からのけん制がきいたのかも知れない。

4月25日の建軍記念日近辺に、6回目の核実験や大陸間弾道ミサイルの実験をやれば、先制攻撃の口実を与える。

私は先週、トランプ側が本気で戦闘行為を始めるかどうか疑わしいとし、銅の価格が下落したことを挙げた。また肝心の韓国の株式市場が4月7日の「シリア攻撃」でもほとんど下落していない(日本は14日までで2%弱下落、韓国は0・7%)。日本では安倍首相がVX攻撃を口に出して危機を強調しているが、韓国の主要紙はむしろ反発している。

 私はトランプ政権は中国を動かして石油禁輸に追い込みたい。いまはそのために米国単独でも―とおどかしている。市場はそこいらを読んでいる。ヘッジファンドが円買い、日本株売り、日本国債買いと日本に集中したのは、実は森友学園で安倍首相がひょっとすると辞任すると思ったからだ。3月第三週が売りのピークだったが、23日に籠池前理事長の独演会があったあたりだった。当時毎日TVで森友問題を取り上げられていたが、最近はなくなった。そろそろ、リスク・オンをヘッジファンドは考え始めている。

2月の安倍さんの「議員もやめます」と関与を否定したのに飛びついた民進党だが、「お家芸」の内部分裂もあって、支持率はメチャ低い。一方、多少下がったが、安倍内閣の支持率はじめ世論調査でも50%以上。リスク・オン再開だ。

 

ヘッジファンドがリスク・オフの理由にしていた4月23日のフランスの大統領選も、英国のカケ屋の数字をみると中道派のマクロン氏が90%の勝利。これなら5月7日の第2回目の結果も十分に読める。オフからオンに変わるはずだ。

あと、強いてリスクオフ要因を探すと5月9日の韓国大統領選。文在寅(ムン・ジェイン)共に民主党候補を追って安哲秀(アン・チョルス)国民の党候補が台頭してきた。米国は「北」の走狗でTHAAD配備に反対のムン候補を阻止したい。「北」の脅威を強調し、中国の韓国いじめを緩和させる工作が行われている。21日のKBSはブンゲリ核実験場付近の住民を避難させた、と報じ、

緊迫感をあおっている。ま、私は勝負がついていると思うが。

結論。市場関係者はテクニカル・アナリストの大方が日経平均1万8000円割れ、とか円高を予想していることはご存知だろう。しかし私はまだ市場の三分の二を占めている外国人とくにヘッジファンドの動向が、株価の急回復を狙っているとみる。弱気の向きはアレレと考えるだろうが、いぜん私は強気だ。

あともうひとつ。忘れていたが4月28日には米国の暫定予算が期限になる。4月21日まで議会はイースター休暇で1週間のうちに党派対立を超えて政府閉鎖を回避すべく歳出法案を成立させなくてはならない。共和、民主両党とも2013年10月の16日間続いた政府閉鎖の記憶が強く、回避姿勢がある。これはリスクにはならないだろうが心配症の向きも結構多いので。

 というのは政府高官の554のポストのうち就任したのはわずか22.体制つくりの遅れは深刻で万一、政府閉鎖が始まればトランプ政権への打撃は少なくない。今週末にカタがつくべく議会工作は行われているが、すでに下院の共和党指導部の調整力不足は前回のオバマケア代替え案で明らか。これに失敗すればトランプ政権の政治遂行能力への疑問も生じよう。まあ私は大丈夫、何とかなる、と楽観している。

 

「わたしは、ダニエル・ブレイク」に話を戻す。英国ではキャメロン首相の財政緊縮化が弱者をトコトンいじめる。靴がこわれたといじめられる女の子の話なんて涙なくして見られない。そのひどい環境の中で自分の尊厳を守り続けるのは容易でない。大国の間で自分もーと声を挙げる小国、その指導者は本当はカワイソーな男なのだろうなあ。

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