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2017年6月18日 (日)

「レ・ミゼラブル」とカタール断交の意外な影響(第863回)

「レ・ミゼラブル」とカタール断交の意外な影響(第863回)2017・6・18


1個のパンを弟たちのために盗んで、19年間も獄中に拘置されていたジャン・バルジャンの物語はご存じだろう。銀の燭台を司教にもらって正しく生きると決意する話とか、コゼットがテナルディエ夫婦からいじめられていたのを救出する話、コゼットを生んだフォンテーヌの髪や歯まで売る話とか、皆が知っているが、それでも心を打たれる。

 今回帝劇で30周年記念公演を観た。ロンドンで3回、NYで1回観て日本では10年ぶりだったが出演する俳優たちの巧いのと声のいいのにびっくり。外国の公演に劣らない。

 やっぱりショーンバーグの音楽が素晴らしい。民衆の歌、オン・マイ・オウン、宿屋の主人の歌、幼いコゼットの歌う雲の上のお城。何回聞いても感動し私は涙をと流した。恥ずかしかったが。

 ジャン・バルジャンが、重傷を負ったコゼットの恋人マリウスを救出しようと、パリの下水道を逃げ回る。ストーリーのヤマ場だ。1832年の6月暴動の夜。原作者ビクトル・ユーゴー自身が体験したバリケード近辺の緊迫感が反映している。

 現在の世界の緊迫感は、オバマ政権が「警察官」であることをやめ、トランプ政権になって、はっきりいうが一層の無責任になったこと。中国、イラン、北朝鮮など国際間の安定への「ブチ壊し屋」がますます図に乗って動き出す。米国との同盟国はワリを食う。

 私は意外な情報を聞いた。526日のG7の際に開かれた日米首脳会談では、席上トランプ大統領は中国重視発言を行い尖閣防衛義務にも触れず、安倍首相は頭越しの米中接近を危惧した、とか。もちろん公表されたステートメントにはでは「北」問題での結束強化、テロの脅威への協力での成果をうたったが、実は違った、と。またG7の討議をトランプ氏に愚弄され米欧間を取り持とうとした安倍首相の試みも挫折した、とも聞いた。

 そんな場合、世界が軽く見ている事件も大ごとになりやすい。65日と6日、サウジアラビア、エジプト、UAEなど中東の主要国はカタールとの国交断絶を表明した。2014年にもサウジとUAEはエジプトの政変に絡んでカタールと対立、自国大使を帰国させる抗議を行ったが、この時は8か月で終わった。今回は陸、空路も遮断する完全な国交断絶であり、中途で方針を緩和するとサウジ王家の権威が傷ついてしまう。

 最終的にはカタールのタミム首長の退陣、亡命まで事態は悪化するのでは、と私のワシントンの情報ソースは懸念している。

 小国カタールがここまでいじめられるには理由がある。同国の資金援助がムスリム同胞団などイランが背後にいるテロ組織を活性化している。またカタールはイランと共同で天然ガス開発を進めているし、タミム首長がイラン支持を述べた。しかし5月にトランプ大統領がサウジを訪問した折に、いろいろと情報を伝えたのが背景らしい。

 カタールから日本へのLNG・原油の輸入依存度はそれぞれ17%,8%。途絶が懸念されたがともに価格は下落、まだ世界の原油市場は大きな不安材料と解釈していない。日本としてはスポットで購入すれば大事あるまい。

 問題は二つ。第一は半導体製造に不可欠なヘリウムガスが断交後、対日出荷が止まっている。国内在庫は一か月で我が国の半導体生産の先行きが懸念される。

 第二はカタールの政府系ファンドが収入の途絶から手持ち資産とくに株式を売却する不安。4月現在で3350億ドルに達し、昨年6月の2560億ドルから急増している。370兆円だ。断交以降日本株への外国からの売りが増大しているが、本当にカタール政府系ファンドが売っているのか、ヘッジファンドが仕掛けているのか不明。

 カタール株式市場は13%下落し、国債の信用を示すCDSは急上昇している。また大株主であるフォルクスワーゲン、ドイツ銀行、資源大手のグレンコアの株価も下落している。

 もちろんコミー前FBI長官の証言、その後のセッションズ司法長官証言の打ち消し証言にもかかわらず活発に司法妨害説を流すメディア。英国選挙のメイ政権議席減、FRBイエレン利上げなどなど。売り要因は多い。しかし恐らく慎重に全体の相場をコワさないように、別の表現をとればプロらしい売りがすでに出ているのかもしれない。国交断絶が1か月やそこらで解決せず、長期間にわたれば、売却リスクは拡大してゆく。

 トランプ・ツイッターでは断絶直後サウジ支持、カタール批判を述べていたが、その後、和解するなら米国が交渉を取り持つ、と態度を改めた。しかし5月の訪問の時の情報提供の手前もあり、早急に仲介に動くかどうか。しょっちゅう態度が変わる男だから。

 結論。少なくとも日本株は目先、高値更新の可能性は少ない。私は慎重だ。

 別の情報では、解散総選挙は明年9月の自民党総裁選の後。そのあたりで米シムズ教授が呼ばれて恐らく消費税引き上げの延期か取り消し、永久債か100年債発行が決められるか、の論議の開始になる。秋の下げ相場の後、壮大な上昇が始まるだろう。その時は、その時。

 ミュージカル「レ・ミゼラブル」の30周年公演で特別なカーテンコールが45分間もあり、最後に画面に歌詞が出て「民衆の歌」を劇場内の全員で歌い、もちろん私も歌った。

 「戦う者の歌が聞こえるか?

 鼓動があのドラムと響き合えば

 新たに熱い生命(いのち)が始まる

 明日が来た時 そうさ明日が!」

景気の鼓動と政策のドラムが響き合えば、明日の日本は明るくなる。

 

 

オマケです。今週発売の「週刊新潮」6月22日号111ページに私が昭和50年代に「財界」誌で紹介したサウジアラビアの武器商人アドナン・カショーギの死が紹介されています。私が山一証券経済研究所で仕事をしていた時、誰も日本人が知らなかった武器商人ビジネスのことを書きました。1日25万ドルを平気で使った大富豪です。立ち読みでいいですからお読みください。

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