今井澂プロフィール

講演・出演など

お問合せ

広告


2018年6月18日 (月)

映画「終わった人」と骨太の方針の読み方と私の大きな夢(第913回)

映画「終わった人」と骨太の方針の読み方と私の大きな夢(第913回)2018・6・17

 舘ひろし主演でとても評判がいい。「定年って生前葬だな」とか「夢なし、趣味なし、仕事なし、そして我が家に居場所なし!!」という予告編に誘われてみたが、周囲は中高年のご夫婦連れでいっぱい。大いに笑える上出来なコメディで面白かった。

 

 東大法学部卒で大手銀行のエリートだった主人公壮介(舘ひろし)は、同期のライバルに負けて出世コースから外れ、子会社に出向させられてしまう。そのまま銀行に戻ることもなく、63歳の定年を迎えてしまった。退職して翌日から、時間を持て余してしまう。

 

 公園、図書館、スポーツジムなど、主人公は立ち寄って、そこが780代の老人ばかりでイヤ気がさしてしまう。グチをこぼしてしまい美容師として忙しく働く妻(黒木瞳)から次第に距離を置かれる。職探しを始めると超高学歴、高職歴が災いしてダメ。

 

 そこに新興IT企業から「顧問」になってほしいと誘われ、就任。順風満帆に見えたのだが思いもよらない災難が待っていた。

 

 この611日からの1週間は大変なイベントばかりだった。米FRB、欧ECB、日銀の三大中銀の金融政策、12日の米朝首脳会談、米中の貿易摩擦、その前にG7の激論とトランプ大統領の中途退席、さらにはアルゼンチンの通貨不安、国内ではこれらの巨大ニュースに紛れて注目されなかったが、政府は「骨太の方針」を発表している。

 

 一つ一つコメントする気はもともとない。米朝会談は「政治ショー」だったし、数少ない日本にとってのメリットは拉致問題と安倍さんの金正恩との会談がイケそうなこと、かな。

 

15日に発表された「骨太の方針」はもっと注目されていい、と私は思う。

特に①外国人労働者の積極導入と②財政の弾力化を取り上げてみよう。

 

昨年末の外国人労働者の数は1279000人、労働力人口の4%ぐらいだが、「年20万人から25万人」ふやし2025年には315万人、労働力人口の67%となる。

 それでも団塊の世代が続々70台に入るので年間40万人減少してゆく。20万やそこらじゃあ全体としての労働力は減少。これにAIの効果があるので、私のこの材料に対する直感は、いわゆる「口入れ屋」。人材の紹介会社はますますいい、ということだ。

 

もうひとつの「財政の弾力化」は2020年のプライマリーバランス黒字化目標を2025年に延ばした。同時に消費税を10%に引き上げることも骨太の方針に明記している。

 「消費税」は安倍さんにはイヤな思い出しかあるまい。平成26年の消費税8%への増税は駆け込み需要の反動減が27年度に3兆円。日本経済の停滞を招いた。

 

そこで昨年6月に首相が2度目の増税延期を決断する前、財務省は消費税2%分に当たる5兆円の景気刺激策が持ち込まれたが、それでも首相はOKしなかった。

 

私は2019年秋ごろには①米国景気の景気先行き不安②欧ECBの利上げ予想③中国のますますの景気減速、があるし、2020年にはオリンピック以後の景気に不安がある。10%への増税をやるべきでないと思う。それでも老齢化対策で増税が必要なら、利息ゼロの永久債を日銀と政府の協定を結んで発行、年間11兆円の利払い費の不要分を「財源」にしたらいい。こう考える。防衛費も増えるし、国土強靭化政策も、もつと具体化するべきだ。インフラ整備が中心。建設大手がいい。

 

 幸い、自民党総裁選が9月にある。細田派の96人24%、麻生派は60人15%、二階派44人11%。これに対し石破派20人5%、岸田派47人11%だから、無派閥73人18%が反旗を翻しても安倍さん三選は固い。

 

 石破さんも岸田さんも財政再建派だし、経済重視とはみられていない。だから外国人投資家は内閣支持率が下がると、日本株の比重を下げている。安倍さんの三選が確定的と見られれば、ヘッジファンドが買い始める。外人マネジャーに聞くと「年末までに日経平均24500円」というのが大勢だ。

 

 今回、私が特に大注目しているニュースと銘柄をご紹介する。ペプチドリーム(4587)だ。

 

なぜか。「特殊ペプチド医薬品」の原薬を製造販売する「ペプチスター」の本社工場の建設ガ始まった。この市場は同社によると「50兆円、そのうちの原薬市場の8割4兆円の売上高を目指す」としている。このぺプチスターはペプチドリームと塩野義、積水化学、産業革新機構、三菱商事などオールジャパン体制で10数社が出資し、計200億円の資金でスタートした。来年9月の稼働を予定している。

 

 特殊ペプチド医薬品は次世代医薬品として知られる。天然のアミノ酸に特殊なアミノ酸を人工的に組み込み、さらに環状構造を持たせた特殊環状ペプチドを多様に発生させることができる。これを大量生産する技術をペプチスターは成功し、特許を取得した。同社社長は「10年後、20年後にはこの国の基幹産業に位置づけられるようにしたい」と述べた。(サンケイビズ、614日)。

 

 私の寿命は10年持たないだろうが、この夢は素晴らしいと思う。もちろん海洋開発も私の希望だが、これも加えたい。超長期投資を前提に投資も。

 

 映画の主題歌は布袋寅泰氏の作詞、作曲で今井美樹が歌っている。「あなたはあなたのままでいい」。いい歌だ。ごく一部をー。

 「この先 残る日々は、満ちる夕日 砂時計のように愛をひと粒づつすくいながら 明日を待つの」。わたくしも明るい明日を待つことにしよう。



講演会を開催します。
「黄金株2018セミナー」6月24日(日)13時から16時
場所:ガーデンシティーPremium京橋(東京)
講師は私と三菱UFJモルガンスタンレー証券チーフ・テクニカルアナリスト宮田直彦
氏
お問い合わせ、お申し込みはhttp://frstp.jp/gs180624

6月14日までの早期特別割引は終了いたしました。
残席が少なくなっておりますので、お早めにお申し込みください。
ビデオ受講も可能です。
ご多忙のこととは存じますが、どうぞ奮ってご参加ください。




2018年6月11日 (月)

映画「春の珍事」と米朝会談の行方とトランプ氏サミット中途退席のワケ (第912回)

映画「春の珍事」と米朝会談の行方とトランプ氏サミット中途退席のワケ

(第912回)2018・6・10

 巨人がダメなゲームばかりしているので、今シーズンはまことにつまらない。代わりに大谷を観ることにしているが、今度はケガ。投手でも打者でも成績を上げているんだからやはり楽しいから早く治ってほしい。DVDで私の好きな野球もの映画「春の珍事」を観た。1950年公開の古いものだが。

 レイ・ミランドは野球好きの大学の先生で専門は化学、実験中に校庭からボールが飛んできて化合させていた数多くの薬品がメチャメチャに。

 ところがその薬が染みたボールを何気なく転がしてみると、木を避けてゆく。試しに校庭で投げればボールは木のバットを避けるので、野球部の選手も打てない。

 

 そこで先生はこの薬をヘアトニックの瓶に詰めて大リーグに乗り込み、一躍有名投手になる。グローブに穴をあけて、薬を染ませて布を隠しボールに塗って投げるから、どんな強打者でも、バットに当たらないのである。

 

 次第に薬はなくなるが、偶然できた薬なので作れない。ついに薬は切れ、先生は打たれ始めて大ピンチ。しかし投手ライナーを右手で捕ってゲームセット。優勝。素手でキャッチしたので手を痛めるのだが、現実には薬がなくなった先生にとってはラッキーな結末になった。 恋人とも結ばれハッピーエンド。

 

 DVDで観ながら私は「この先生、イカサマ薬を使ってうまいことして、まるで金王朝のイカサマじゃないの」と思った。

 

 核開発、ミサイル開発を続けながら、時々「核放棄」の約束を行い、代償として経済援助を取り付けるが、現実には嘘っぱちで、時間稼ぎで上流階級は、いい思いをしながら、核開発を続ける。これを繰り返して金王朝は国民に惨めな生活を続けさせつづけた。

 

 中国が昨年の党大会まで、チャイナ・セブンの中の三人が石油閥、江沢民派、「北」シンパで原油などの供給があったことが、制裁の抜け穴になった。

 

 ところが習近平独裁時代で「北」派三人はクビ。昨年10月以降、まずジェット燃料、次いで原油も供給が絞られ、ついに平壌には木炭自動車まで、走り出した。外貨準備も2月には底をつくことが分かったので1月から平和攻勢に転じた。冬期五輪参加、南北首脳会談、そして米朝会談、2回の訪中といった具合だ。

 

 私がワシントンから聞いた話では、習近平は金正恩に巨額な借款を与える約束をした、とか。国連制裁があるので、中国共産党と朝鮮労働党との合意にしているらしい。

 また中朝両国間の物流も大幅に緩和されているが、これも民間主導という形でゴマカしているそうだ。

 

 これを見逃す米国じゃない。トランプ・ツイッターで「最近、中朝国境に『穴』が開いているそうだ。それは協定が結ばれた後の話だ」「金正恩は訪中してから大きく変わった」と牽制している。

 

 また5月19日の韓国文在寅大統領との電話会談で「板門店会談であなたが聞いた金正恩発言と最近の「北」の行動が違うのはなぜか」と聞いたそうだ。とっさに私は文在寅統領の「仲人口」だと思った。双方にうまいことを言って何とか縁談をまとめようとするウソだ。これかも知れない。ま、12日の結果待ち、ということか。

 

 ところで8,9日のG7サミットと「貿易戦争」について。マスコミが、どこも報じないが、そろそろ終戦、という情報があったのでご紹介しておこう。 これがあったので、トランプ大統領はサミットに最後までいないで中途退席になった。ご存知?

 

貿易戦争は、米通商拡大法232条が米国大統領権限で発動できることになっていることから始まっている。トランプ氏は中間選挙対策にと思って、例の鉄、アルミから始まって関税引き上げを発令し始めたのだが、これはとんでもない所からブレーキがかかった。

 

 米国で「コーク兄弟」といえば知らぬものはない超巨大富豪で、二人合わせて資産1200億ドル。兄弟別々にランクされるから一人での600億ドルは第8位だが、1位のアマゾンのオーナーのジェフ・ベゾス氏の1120億ドルを二人合わせると抜く。もちろんビル・ゲイツ氏の900億ドル、ウオーレン・バフェット氏の840億ドルを抜く。

 

 この二人は2016年の大統領選で共和党にに8億8900万ドル(1000億円)を選挙資金として投入した。

 

 そのコーク兄弟が今回の関税引き上げに猛反対で「民主党に資金を回す可能性」が報じられている。とりあえず数百万ドルを投じて、関税引き上げ反対キャンペーンを開始した(6月4日ワシントンポスト)」。

 

 中間選挙の予備選が始まっている現在、大手資金供給者が叛旗を翻したのだから、トランプ氏の腰が引けたのは当然。ツイッターで「米中両国は最終的には関税を賦課しないで終わる可能性」まで触れている。Gセブンで引っこめたいのだが、そうそう簡単に止めます、ともいえない。そこで中途退席と相成ったというわけ。おわかりか?

 

 東京株式市場にさっそく反応が出ている。半導体関連や電子部品製造機器メーカーは「貿易戦争関連」として3月に売られたが、現在は買い戻しで株価は急回復中。

 

円安、日本株買いで近いうちに節目の2万3000円を抜いて驀進する可能性が出て来た。

心配は米アップルとフェイスブック片や、台湾への部品発注減、片や情報漏れ、それにドイツ銀行だけ。日本株?大丈夫に決っているじゃあないですか。

 

映画のセリフから。右手を痛めて引退を余儀なくされて主人公にチームの仲間がなぐさめる。そこで「引退がいいことである事も世の中にあるんだよ」。大騒ぎになり、世界不況の引き金と騒いだ関税引き上げの問題は、かくて終わり。さてどう幕引きをするのやら。


講演会を開催します。
「黄金株2018セミナー」6月24日(日)13時から16時
場所:ガーデンシティーPremium京橋(東京)
講師は私と三菱UFJモルガンスタンレー証券チーフ・テクニカルアナリスト宮田直彦
氏
お問い合わせ、お申し込みはhttp://frstp.jp/gs180624
6月14日まで早期特別割引をいたします。ビデオ受講も可能です。
ご多忙のこととは存じますが、どうぞ奮ってご参加ください。

2018年6月 4日 (月)

映画「無防備都市」とG・ソロスが、送ってきたメールとイタレグジット(第911回)

映画「無防備都市」とG・ソロスが、送ってきたメールとイタレグジット(第911回)2018・6・3

 第二次大戦中の1944年に撮影が開始されたロベルト・ロッセリーニ監督の伝説的な名作。ロケ第一、素人俳優起用というネオリアリズモの原点でもある。

 失脚した独裁者ムッソリーニを傀儡政権として担いだナチス・ドイツ軍はイタリア全土を占領し、抵抗するレジスタンスを弾圧する。指導者の拷問による無残な死。ひそかに運動を支援していた神父の銃殺。そして婚約者が連行されるトラックを追いかけ、虫けらのように射殺される女性。

 

 観客を感動させたのは、死の瀬戸際でもなお人間の心を失うまいとする人々の姿とナチスへの怒りだ。

 

 5月29日欧州発世界株価暴落の売り材料は①ヘッジファンド大手のブリッジウオーターのトップのレイ・ダリオ氏の欧州株特にイタリア銀行株の大量売り②前日のジョージ・ソロス氏パリでの講演で「難民排除に傾く伊政権の失策がユーロ危機を再来させる」と警告、の二つとされている。

 

 ソロス氏から私に送られてきたメールをよく見ると、従前からの氏の主張の「何か次に予想外の圧力がかかった場合、EU分裂」といっていたのが「もはや過酷な現実だ(この表現を3回も使っている)」と。たしかに強い警告になっている。

 

 現在のイタリア政局は不安の塊だ。議会で多数派を占める「五つ星運動」と「同盟」は、反EUの流れ。だがマッタレラ大統領はIMF元財務局長を指名した。

 このため8月または9月に再選挙が実施され、反EUかEUとの協調か、イタリア国民は事実上の国民投票を迫られる。これを反映してイタリア国債のCDSスプレッドは一気に2011年の国債破綻危機時の水準に急騰。10年ものイタリア国債利回りは5月初めの18%が3%台半ばに上昇している。

 

 ヘッジファンドのある大手は、ブリッジウォーターのCEOが「国民投票の確度が高まっている」とのインサイド情報を得て、イタリアの銀行株の大量売りを始めた」と。この大手の動きに雷同した中小HFが、ついでに日本株迄先物を売り始めた。そこで29日と30日合わせて460円の日経平均大幅下げにつながった。

 

 では、この世界的な株安に永く続くのか。

材料となるのは「イタリアもEU離脱」が本当に起き、ユーロがメチャメチャに安くなり続くか、だ。

 昨年11月のEU「ユーロ統一通貨意識調査」を見るとイタリアのユーロ賛成派は59%で反対派の30%。

 

 同調査での「EU離脱」への楽観派(離脱しない)は50%で悲観が40%。

 ちなみに英国のEU離脱当時は楽観派43%より悲観派43%より悲観派の49%が上回っていた。

 

 日本の元財務相高官も「ECBの国債保有額のGDPEは日銀よりはるかに低い.買い余力があり、イタリア国債の買い入れに不安はない」。

 

 私は大ごとにならず、HFの”仕掛け“は一見成功したように見えるが、せいぜい23週間、と見る。下値は日本株の場合、もう届いていると考える。23000円につっかけるときのスピード調整に過ぎないだろう。いぜん私は強気だ。

 

 映画のセリフから。映画のラストでドン・ピエトロ神父は「立派に死ぬのはたやすいが、正しく生きるのが困難なのだ」と言い残して銃殺される。83歳になろうとしている私には死ぬのも大変なことは周囲の例を見るとわかるような気がする。立派にまた元気で仕事をし続けたい。

講演会を開催します。
「黄金株2018セミナー」6月24日(日)13時から16時
場所:ガーデンシティーPremium京橋(東京)
講師は私と三菱UFJモルガンスタンレー証券チーフ・テクニカルアナリスト宮田直彦
氏
お問い合わせ、お申し込みはhttp://frstp.jp/gs180624
6月14日まで早期特別割引をいたします。ビデオ受講も可能です。
ご多忙のこととは存じますが、どうぞ奮ってご参加ください。

2018年5月28日 (月)

映画「眼下の敵」米・中・朝のカード切り合い(第910回)2018・5・27

映画「眼下の敵」米・中・朝のカード切り合い(第910回)2018・5・27

 今どきは新作のいいのが少ない。「狐狼の血」はガッカリだったので今週は「レディ・プレイヤー1」の2度目。このコラム用はDVDで私が見たかった潜水艦ものの傑作の「眼下の敵」を観た。1957年の作品で、ロバート・ミッチャムとクルト・ユルゲンス主演。監督はデイック・パウエル。みんな故人になってしまった。

 

 アメリカ駆逐艦とドイツ潜水艦が秘術を尽くして戦ううち、艦長同士がまだ見ぬ敵を尊敬しあうというストーリー。「こいつら、アマチュアじゃないな」というミッチャムのセリフは、当時高校生の私はシビれたものだ。

 

 ご存知の通り、トランプ大統領のドタキャンで、米朝首脳会談が6月12日に予定通り開かれるかどうか、世界中が注目している。

 「北」としては、いつもの通り揺さぶりをかけていたところに予想外のパンチで驚いただろう。しかしその後の反応は素早く、金桂冠外務次官が談話を発表した。

 

 反発すると思いきや、「関係改善のための首脳会談が切実に必要」で「(トランプ大統領を)内心では高く評価していた」とゴマをすり「(米国案を)賢明な案と期待していた」。へええ。

 そのうえで対話の扉は開かれていることをアピールしているのだから、ともかく、どうぞよろしくお願いします、という内容だ。今やボールは「北」のコートにある。今週中にも回答があるのではないか。まあ、勝負あり、じゃないか。

あと何十も追加制裁をやるゾ、とか「北」さえ言ってくれば6月12日に会ってもいい、とか、まあアメもムチも十分だ。

 

 ワシントンの私の情報源は「会談キャンセルの最大原因は米朝両国の認識の乖離だが、次は中国の独断専行だ」と。

 具体的には、勝手に経済制裁の一部を解除したり、在韓米軍撤退を「北」に促すなど、中国の独断専行に対し、政府首脳は「アタマに来ている」。そこで6月にハワイ沖で開催する予定の環太平洋合同演習(RIMPAC)に中国を招待しないことを決めた。またトランプ大統領のツイッターでは「中国との通商協議の完了は国難、最終的にはこれまでと異なる仕組みを考えなくては」とした。

 

 これらの動きと株式市場との動きは次の通り。

 米国では軍需株が小幅安

 韓国では生コン、セメント、建設株が10%以上の急落

 日本ではトヨタなど自動車株下落、対ドル、対ユーロ小幅円高。

原油,銅は安く、市場には戦争ムードはどこへやら、といった状況だ。少なくとも緊迫状態ではない。

   まあ、世界の投資家は様子見。来週の展開待ちだろう。

 

 映画のセリフから。ミッチャム艦長が言う。「破壊と苦痛に終わりはない。不死身の蛇のように、頭を切り落としても変わりが生えてくる。」少なくともこれ迄は、金王朝三代が続いたが、これからどうなるやら。

2018年5月21日 (月)

映画「万引き家族」と対北朝鮮ふたつの特需

映画「万引き家族」と対北朝鮮ふたつの特需(第909回)2018・5・20


 カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に出品された21本の映画の中で、この「万引き家族」が最高のパルムドールを獲得した。是枝裕和監督は5年前のカンヌで審査委員賞を獲得した「そして父になる」のテーマを再び取り上げ、見事栄冠を獲得した。

 

 テーマになっているのは、ある問いかけだ。家族を家族たらしめているのは「血」か、あるいは一緒に送った時間なのか。

 

 映画は、祖母初枝(樹木希林)の年金と万引きで生計を立てている家族が、寒さで震えていた幼い少女を家に連れてきたことから始まる。

 今にも崩れそうな狭い家の中で、仲睦まじく暮らす彼らの日常を突然の危機が襲う。

 

 是枝監督は、「本当の家族とは」という記者の問いに「永遠に一緒にいられなくても、共に過ごした時間が、それぞれの人生の中に深く刻印されること。そのこと自体が家族なのではないか」と答えている(中央日報5月17日)。

 

 いま、朝鮮半島の南と北で「血」が強く意識されている状況だ。今月末には韓国文大統領直属の北方経済協力委員会が「新北方政策」のロードマップを発表する。「北」の完全核放棄を引き換えに、経済再建を援助することになる。膨大なインフラ投資が必要だ。

 

 去る13日米ポンペオ国務長官はフォックスTVのインタビューで「北が核を完全に放棄すれば米国の民間企業による投資を認めるかもしれない」と述べた。ポンペオ長官はインフラ、電力を中心としたエネルギー、農業の三分野が「北」にとって最も重要という認識である。ボルトン国家安全保障担当補佐官も同じような発言を行っている。

 

問題は巨額な投資をどこが負担するか、だ。アジア開発銀行(ADB)がどこまで負担に応じるか不透明。94年のジュネーブ合意の場合には、韓国が「北」に建設された軽水炉発電所の費用の7割を負担した。1兆6400億円(16兆ウオン)

 

 今回はどうか。これまでとはケタが違いそうだ。鉄道、航空路線、電力、ガスーどれも数兆円から数十兆円になりそうだ。しかも「北」はかつてのような衣料、縫製などではなく、ハイテク産業や造船所を望むのではないか(朝鮮日報5月15日)という見方もある。

 

 韓国政府は2014年、北朝鮮の鉄道開発だけで8兆5000億円、と必要額を推定している。また2005年に韓国政府は「北」に200万KWの送電を提供したが、3300億円かかった。その後「北」の電力網の老朽化はひどく、漏電率は何と70%に達しているといわれる。現在の「北」全土の電力網改修には少なくとも10兆円はかかるだろう。また軽水炉方式の発電所建設は一基当たり3600億円かかるので、何基も必要とすると1兆円以上はかかる。(この北朝鮮特需が日本の出番になるんです。これホント)

 

 一方、NY株式市場では最悪のケースを想定した「北朝鮮特需銘柄」が動き出している。ヘッジファンドのごく最近の動きをご紹介しておくと、今回の南北閣僚会談キャンセルはひょっとすると米朝首脳会談の延期またはキャンセル、交渉決裂になり、限定的だが攻撃準備が始まるかもしれないとみる。そこで米軍の限定攻撃関連銘柄を早くもサービス会社が作成、大手ヘッジファンドは16日から買い始めた。これも「北朝鮮特需」だ。

 

 具体的には、レイセオン、ロッキード・マーチン、ウエスコ・エアークラフト、クラトスディフェンスなど。すでにこれらの特需銘柄は17,18日の両日に上昇している。

 

ただし、先日のポンペオ訪朝の折、6月12日の会談の4週間前から1週間おきに進捗状況を相互報告すると合意。15日には「北」から順調に準備を進めていると連絡があった。これが22日の相互報告で「北」がどんな対応をしてくるか、米国政府は待ち受けている。

 

ただ、トランプ大統領から安倍首相に「対北朝鮮の経済制裁解除後の日本による経済援助の検討を進めてほしい」と連絡があった。このことは日本人の拉致被害者解放を意味するし、安倍訪朝までトランプ大統領が決めてくれることを意味する。当然、安倍おろしクーデターは、お気の毒だが大敗北だ。政権不安で売っていたヘッジファンドは買戻しに入るだろう。来週22日に北から連絡がこないで「凶」と出れば別だが、円安日本株買いが続き、9週連騰になるだろう。

 

映画のセリフから。母信代(安藤サクラ)が妹に言う。「血がつながっていない方がいい時もあるじゃん」「そうね。期待しないだけ、ね。」株価の方は大いに期待してください。

 

ご報告です。6月24日()会場は未定ですが、東京でフォレスト出版主催で講演会を開きます。くわしくは来週以降に。とりあえず。

2018年5月14日 (月)

映画「第三の男」と米朝首脳会談と三方一両トクの「落とし所」と原油価格・金利・株(第908回)

映画「第三の男」と米朝首脳会談と三方一両トクの「落とし所」と原油価格・金利・株(第908回)2018・5・13

ご存知の名作中の名作で、グレアム・グリーンの原作をキャロル・リード監督が映画化。私はこの2週間、お子様向け映画を見る気がしなくて、DVDで好きな映画を観た。

 

西部劇小説の作家ホリー・マーティンスは、古くからの友人ハリー・ライムを訪ねて第二次大戦直後のウィーンにやってくる。しかしハリーは直前に交通事故で死んでいた。

 

 ウィーンは米英仏ソ四か国の共同統治下にあったが、英国軍のキャロウェイ少佐はハリーは悪質なヤミ屋だったと告げる。怒ったホリーは友人の身のあかしをたてようと調べるうちに、不審な「第三の男」が浮かび上がる。

 

実はハリーは生きていた。水で薄めたペニシリンで荒稼ぎしていた。正義感とハリーの愛人だったアンナへの恋心から、ホリーはキャロウェイ少佐の指示で友人をおびき出すおとりになる。地下水道で追い詰める少佐ハリーは手負いになりホリーに撃たれて死ぬ。

ハリーを埋葬した後、アンナは待ち受けるホリーを見向きもせず中央墓地の並木道を歩き去る。アントン・カラスのチターの音楽が素晴らしい。

 

後年英国人の友達にこの映画の話をしたら、「あの作品には実に英国人らしいテーマがあるんだ」「何?」「平凡で二流の善人と、魅力的な悪人と、女性はどちらを選ぶか、さ」。

たしかに、オーソン・ウエルズ演じるハリー・ライムの方がジョセフ・コットンの二流小説家よりも魅力的でアリダ・ヴァリがホレるのも当然に見えた。

 

いま、本来悪役なのに必死で善人ぶって演じているのが金正恩委員長。私は朝鮮日報で読んだが「4・27南北首脳会談に先立って、北朝鮮のハッカー組織ヒドウン・コブラが韓国消費社院などに大規模なハッキング攻撃を行っていた(5月8日付)」。南北首脳のあの親善ぶりの準備中だった。

 

この北朝鮮ハッカー組織は昨年5月に全世界で30万台のコンピューターを感染させた「wan nCry」事件を引き起こしし、バングラデシュ中銀や米FBへのハッキング攻撃も行っている。どこに「敵対的行為中断」の合意があるのか。

 

こういう相手だから、米国側も確かに準備おさおさ怠りないように見える。イラン核合意からの離脱表明は「非核化合意が不十分なら、米国は決して受け入れない」というメッセージだろうし、ポンペオ再訪朝も同じ文脈だ。「北」側も金委員長が早速大連に飛んで中国に援護射撃を頼んでいる。3人の解放も同じ。一枚のカードをすでに切らされている。

恐らく米国が北に要求するCVID(完全で、検証可能、しかも不可逆的な核兵器の廃絶)とミサイルの廃棄を中国を検証してもらう。そこいらを妥協点というか落としどころになって、中国軍が正式に駐留する形になる。これも私の想定だが、中国は在韓米軍(3万人弱)と同程度の軍隊を駐留させて均衡をとるのではないか。

 

金正恩としては自体制が維持できるし、習近平は「北」を支配することが出来て得点になる。トランプはトランプで、CVIPを通したのだからメンツが立つ。三方一両得、だ。

 

例によって「日本仲間外れ」説がそうなると出てきそうだが、全くそんなことはない。安倍さんがトランプにキチンと中国を含めた世界中の対「北」制裁を推進することの重要さを納得させたのが、今回の事態の始まりだ。このために「北」は手持ち通貨がほとんどゼロになり、の木炭自動車まで出現。和平姿勢に切り替えざるを得なくなった。

 

平和的な「次」の事態に変わったら、日本のカネを当てにせざるを得ない。かつての対韓国の場合は、円借款と有償合わせて5億ドルだったが、1960年代と現在ではおそらくケタが二つ、違うのではないか。

 

私は本モノの重電機は中国も韓国も作れないので、日立、三菱電機や部品もいいと予測する。円借款なんだから日本企業が有利に決まっている。

 

映画のセリフから。ハリー・ライムがいう。「ボルジア家の圧政と暗殺の時代にレオナルド・ダ・ビンチ、ミケランジェロ、ひいてはルネサンスを生んだ。一方スイスは500年の平和と民主主義の成果は何だった?鳩時計だよ」。オーソン・ウエルズのアドリブらしいが。

 

オーソンの存在感は凄い。彼の出番はすべてさらってしまう。ジョセフ・コットンと乗った観覧車の中でいう。「誰も人類のことなんか考えてない。政府は人民と呼び、オレは野郎とかカモというが、結局同じことさ。」三人の首脳たちは、自分の国の中間選挙や国内の体制固め、それに自分の首が斬られないよう、それぞれの理由で動いている。人類とか世界とかという言葉は頭の中にないようだ。

 

1週お休みしたので、サービスに原油高と、つれ高して3%を超えた米国長期金利について一言しよう。

結論。OPEC、とくにサウジやUAE、クウエートが、在庫を「表面上」少なく見せるため、タンカーに積んで隠す「飛ばし」が行われている。

 

数字で示すと、昨年1月には3億4000万バレルあった原油在庫はわずか1年間で1500万バレルに減少した。原油価格が15%上昇した背景になった。

 

この数字の意味について述べよう。昨年1月の在庫はOPEC生産の10・6年。現在発表されている1500万バレルはOPEC月間生産量の47%に過ぎない。

本当にそんなに劇的に在庫が減少したかというと疑わしい。原油をタンカーに積んで「飛ばし」ているからだ。

 

衛星で見た世界のタンカー係留隻数は中東海域で2月の204隻が4月末には278隻に74隻も増えている。米国は1隻、上海で10隻、欧米1隻、ナイジェリア3隻の増加だから犯人は明らかだ。

 

1隻当たり97000トンとすると飛ばし在庫は6838万バレル。

 

コストはバレル54ドル程度だから、含み益はバレル145ドルで、在庫飛ばし3か国は30億ドルを超える利益が出た。

もちろん原油価格高は①米国と連合国のシリア空爆②米国の対サウジ核リアクターの技術供与③米サウジの動きに刺激された異端の核開発再開。それに④トランプ政権のイラン制裁離脱も中東不安材料として買い材料となったのは確かである。

 

しかし216日以降の原油価格上昇の主因がOPECの在庫急減ニュースだっただけに、きわめて怪しげな「砂の城」のように見える。トランプ大統領にこの事実をツィッターで激しく糾弾して、いったん原油高=長期金利上昇は足止めされたが、ここ、23日再びともに、上昇に転じた。NYダウは上伸したが、これは反落を予想しているからだろう。

 

日本株式市場はSQもあるが、この原油高をまともに受けて強含み横這いでの推移となった。原油高と政治不安を理由にしているが、これはほぐれ始めるだろう。私は強気姿勢を変えていない。原油安が再び日本株買い材料になる日は近い。

 

もうひとつ。柳瀬喚問で漸く国会が動き出したのは大きい。外国人投資家は長期安定政権に不安が出たここ半年間日本株を売っている。柳瀬氏は追及を切り抜けている。これも6兆円の先物売りの買い戻しの材料になるだろう。

 

もうひとつ、ある大材料があるのだが、それはナイショ、来週以降に。

最後にお詫びしなければ。先週予告なしでお休みして、ファンの方からどうしたんですか?とお問い合わせがあり、恐縮しました。私は元気です。

2018年5月 1日 (火)

映画「レディ・プレイヤー1」と必ず急騰するこれだけの理由(第907回)

映画「レディ・プレイヤー1」と必ず急騰するこれだけの理由(第907回)2018・4・30

71歳のスティブン・スピルバーグ監督がVR(ヴァーチャル・リアリティー)の世界を映画にした。この名監督は「ペンタゴン・ペーパーズ」と2本を同時公開させるという精力的な仕事ぶり。映画館では7月公開の「ジェラシック・パーク炎の王国」の予告編をやっていたので、私はマイったなあと思った。すごい!

 

 2045年、世界中の人々がアクセスするVRの世界「オアシス」で理想の人生を楽しむ。ところがある日、オアシスの開発者で大富豪のジェームス・ハリデーが死去、遺言でオアシスの隠された三つの謎を解明した者に、45兆円の遺産とオアシスの運営権を差し上げる、と発表。そこから世界中の人々が謎解きに躍起になる。ヨーイ・ドン!だ。

 

 ここから三つの試練が始まる。第一はレース・ゲーム、第二が何とスタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」、第三はアタリの「アドベンチャー」だが、映画で「ガンダムvsメカゴジラ」の乱闘が入る。映画ファンの私としては三船敏郎さんのアバターがとんでもないところで、出てくるだけで嬉しい。日米のポップカルチャーのキャラクターが一緒に悪と戦う。まことに楽しい映画だ。何べんでも観たい。必ず新しい発見があるだろうから。

 

 実は私が毎週末にお客様にパソコンやスマホで聴いていただく「相場ウラ読み」というボイスメッセージがある。ゴールデンウィークなので来週はお休みいただくのだが、私は「来週、市場が開いている5月1,2日に、私にダマされたと思って、海運株とか重電機株、大手建設株をお狙いなさい」と申し上げた。もちろん、日経平均も上昇必至、とみるから日経ブルも悪くない。強気の理由は次の通りだ。

 

 日経平均、TOPIXともに複数の短期移動平均線(13日、25日、40日など)が長期(200日)の移動平均線に収れんし、その近辺で上向きに方向転換している。これは昨年9月下旬、あの昨年10月の16日連騰の直前と同じだ。日経平均が少なくとも1,2か月の上昇相場に入った可能性を示す。

 4月23日に日経平均、24日にTOPIXの20日移動平均と40日移動平均がゴールデンクロスした。これも昨年9月25日以来のことである。

以上は三菱UFJモルガン・スタンレー・スタンレー証券チーフ・テクニカルアナリスト宮田直彦氏の分析による。

 私が以前から申し上げている通り、ヘッジファンド中心の先物売り(1~3月6兆円)がまだ2割しか買い戻しになっていない。この先物買戻しは3週連続、これがまたまだ続く。当分、外国人投資家は買い手だ。

 4月27日、南北首脳会談が行われ、当分平和ムードが高まっているが、これはHFの日本株買い円売りの作戦につながる。ひところの日本株売り円買い作戦の逆にあたる。

 

日経平均の目標?一株当たり利益を、かりに手堅く1720円として、14倍なら2万4000円を超える。これがとりあえずの目標だ。

 

 注目していただきたいのは日銀のETF買いが4月に入って、3,4の両日しか、主力の一日当たり700億円を超える買いを入れていない。

 

 「北」の状態を甘く見てるんじゃないか、と言われそうだが、そうじゃない。いまはマスコミは安倍さんに有利なことは報道しない。ごく一例は日本カヤの外説で、ポンペオ訪朝は知らされていたし、訪米した安倍首相は「必ず拉致問題について言及する」との約束をトランプさんから得た。安倍さんは平昌五輪で「北」の金与正さんに会って、平壌ではついに木炭自動車が出現したというニュースを聞いている。これは「北」という国家が崩壊に近い、という情報を得たということだ。やはり中国は原油供給をしぼっている。

 

 もちろん結論を出すのは余りにも早すぎる。しかし「北」が相当追い詰められて、資金や燃料を得られるためなら、かなりな条件をのむだろうということは断言していい。先行き、日本が発電所を含めたインフラ建設の担当になることも、私は確信している。株高の背景になる巨額の円借款による受注の見通しは明るい。

 

映画のセリフから。主人公が言う。「現実の世界はつらいことが多いのだが、やはり現実だけが信じられる。」ところが株の世界では、いろいろな材料から予想図(シナリオ)を作り投資戦略をたてる。そこにギャップがあるのだが、南北の今後の展開は私には日本株の大きな買い材料と考える。万一、戦争状態になったら?まあ、ショックでさがつたところは大チャンス。しめしめ、だ。

2018年4月 9日 (月)

映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」とトランプと安倍首相(第904回)

映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」とトランプと安倍首相(第904回)2018・4・8


 先日のアカデミー賞で日本人辻一弘さんの特殊メーク賞獲得が話題になり、主役のゲイリー・オールドマンが主演男優賞。この演技だけで一見の価値がある。面白いし、おすすめできる。

 

 1940年5月9日、チャーチルが首相になってからの4週間、脆弱な政権で前首相と外相がヒトラーとの和平を主張、二人が辞任すると内閣総辞職の危機があり得る状況だった。また国王ジョージ六世とも(当初は)仲が悪い。

 一方、フランスは陥落直前、連合軍はダンケルクに追い詰められ、英国はこの映画の原題のとうり「ザ・ダーケスト・アワー(最悪の時)」にあった。

 

 チャーチルはまずダンケルクの30万人の英国兵を民間の船を徴用する「ダイナモ作戦」を発案、救出に成功する。一方、チャーチルは地下鉄に乗ってロンドン市民に話しかけ「絶対に降伏しない」という民意を聞く。その後、まず閣議で、次は議会で演説。「和平交渉は行われない、徹底抗戦する。これが民意だし首相としての義務である」、と。議員は一斉に起立して同意を示すハンカチを掲げてみせる。

 

 ヒトラーは英国に和平交渉を持ち掛けるのに、弟分のイタリアのムッソリーニ首相を仲介役に使った。外交手段にはいろんな策略がある。

 

 トランプ大統領は、1989年、当時のブッシュ()政権に対ソ軍縮交渉の代表に任命するよう執拗にロビー活動を行っていた。現実には外交官が起用されたのだが、ある会合でトランプは自分がどうするつもりだったかを話した。

 

 「まずゴルバチョフやソ連代表団に丁重に接し、できるだけソ連側の意向に沿って気持ちよくさせて交渉にのぞむ。そして交渉の冒頭に面と向かって「fuck you!」と恫喝し直ちに退席する」。

 

 この外交官は「トランプ氏は混乱や騒動が大好きだ。脅したり尊大な口を利いて相手のバランスを崩し、交渉の前途に不安をもたらす。

 

 これが「hit and deal」というトランプ流交渉術だ。

 

 いま米中貿易戦争と騒がれている関税引き上げ、知的所有権の対中攻撃は、この「ヒット・アンド・ディール」の一環、と考えたらいい。恐らく「北」は金正恩委員長との会談でも同じ、と考えたのだろう。金委員長は中国に駆け込み、IOCのバッハ会長にまでゴマをすった。会談冒頭の「hit」を防ぐつもりだろう。

 

 なんとも安倍首相は強運だ。

 

 キッカケは3月26,7日の中朝首脳会談である。これで国内の空気がガラリと変わった。

 

 その前は、森友文書の問題で一部のマスコミの安倍おろしの声が高く、どこで聞いても首相退陣で問題は時期だけだった。自民党首脳の中でも(一部だが)そういう声もあった。

 

 ところが、中朝電撃対談で「ここはやはり安倍さんの外交力」という見方が台頭した。

 

 共同通信の4月1日発表の緊急電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は42・4%で、3月17日、8日の前回調査から3・7%上昇した。

 

田原総一朗さんも「下手をすると30%を切るのでは」と書いていた。またヘッジファンドの日本株売り円買い作戦も、マスコミや証券会社のストラテジスト情報で「日本の安倍政権の交代近し」と見て開始されていた。12週間、外国人投資家は日本株売り越し、額にして8兆円にのぼっている。うち6兆円は先物売りだ。

 

 まだ1社だけの世論調査では、マユツバもの、とみているファンドマネジャーもいる。しかし今週末から来週にかけての世論調査が「上昇」なら、泣く泣く買い戻し、になるだろう。

 

 連日カラ売り比率が45%という経験的にはメチャ高い売りも同じで、買い戻しに決まっている。

 

 私の強気は変わらない。あと何週間で私の勝ち、は目に見えている。Vサイン、だ。

 

 映画では、チャーチルが手の甲を相手に向けてVサインを出したら、新人の秘書が「首相、そのやり方だと“クソくらえ!”という意味なんですよ」と忠告。以降、手のひらを相手に見せる形のVサインに変わる。

 

 チャーチルの名言は多いが、この映画では「勇敢に戦って敗れた国はまた起き上がれる。しかし逃げ出した国に未来はない」。これがチェンバレン前首相の和平交渉主義の抑え込みに対する切り札になる。私はこの言葉に共感する。勇気ある言葉だ。

2018年4月 2日 (月)

映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」と安倍さんの内憂外患(第903回)

映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」と安倍さんの内憂外患(第903回)

2018・4・1


 スティーブン・スピルバーグ監督でメリル・ストリープとトム・ハンクス共演、と来れば面白いに決まっている。みごとな映画職人芸で私は感動した。一見に値する力作と思う。

 

 47年前の米国紙ワシントン・ポストは当時、優秀な記者を抱えていたが、一地方紙に過ぎなかった。編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)はニューヨーク・タイムスに対抗すべく執念を燃やしていた。

 

 ニクソン政権の圧力でニューヨーク・タイムスが世紀のスクープを報道できなくなった時、チャンスがやってきた。ワシントン・ポストは機密文書のもう一部のコピーを入手した。

 しかし顧問弁護士や財務顧問は公表に反対し、社主で発行人のキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)に投資家は資金を引き揚げ、彼女とブラッドリーは刑務所行きだと警告した。

 

 この映画のいいところはキャサリン・グレアムの成長物語でもあること。まだ男女平等の概念がない時代だ。自殺した夫に代わってトップになったが、周囲からまともに相手にされず自信もない。しかし機密文書をめぐり決断を迫られ、米新聞界の大物、働く女性の模範になってゆく。

 

 内憂外患を抱える安倍首相、株価も外国人売りで一時大幅下落したし、円レートも105円を切るシーンも。323日には2回底入れしていた21000円近辺を切って2619(974円安)をつけたが、30日には21454円とまずまずで引けた。

 

 27日の佐川証言で①文書改ざんは理財局で処理した②首相、麻生副首相や首相夫人の圧力、関与を否定した。

 

 「なかったこと」の完全な証明は難しい。しかし偽証罪に問われるリスクを承知の上の証言だから、疑惑は晴れた形である。

 

 改ざん前文書にある「特殊」「特例」が「10年間の貸付後に売却する」という手続きが異例だったので通達によって「特例処理」したという証言を行った。野党の質問が繰り返し同じ内容で、TVは同じ回答を映して「疑惑は晴れません」と絶叫していたが、何とバカバカしい。「内憂」の懸念は完全に去った、といってよかろう。

 

 一方、26日に行われた金正恩の中国行きという「外患」である。

北朝鮮側が訪中を申し入れたことは報道から明らかだが、私は5月までに開かれる米朝首脳会談に先立って、米国トランプ政権と中国によるオドカシが効いたと見ている。制裁も昨秋から効いており、2月に外貨準備ゼロに追い込まれたのも一因だが。

 

 たしかにブラフはすごい。

 まず米国。①対「北」穏健派辞任(ジョセフ・ユン・ティラーソン)と強硬派登場(ポンペオ・ボルトン)②西太平洋海軍再編(強襲揚陸艦、イージス艦2艘追加)、原子力空母9艘ドック入り(春以降出撃可能)、病院船日本海へ配備③横田基地に7000戸の米軍家族用仮設住宅と地下壕建設(完了))

 

 次に中国。①人民解放軍7万人を国境配置②30万人の軍による占領訓練(韓国語で「止まれ!動くと撃つ!を学習させた。

 

 日本も。北朝鮮情勢対策本部設立(邦人避難。しかも韓国領内に入らない避難方法の検討。

 信じられないかも知れないが、文鮮明大統領の嫌がらせ。すでに3月18日、米原子力潜水艦の釜山寄港を拒否するほどだ。「北」の毒は韓国の体内に回っている。

 

 これじゃあ金正恩がトランプ政権が条件付き降伏を考え、習近平主席に援護射撃を援護射撃を頼みたくなるわけだ。これまでの米国大統領とトランプ氏は違う。本気を感じるに決まっている。

 

 まだ安倍政権をどうしても倒したい勢力にとっては、やめにしたくないらしい、また「北」の脅威がなくなったわけでもない。」しかし、長期政権への不安を売り材料に、ここ11週間で8兆円も売った外国人投資家だが、売りのうち先物の6兆円分は今週から買戻しに入ると私は確信する。

 

トランプ大統領の方は、「北」が中国に駆け込むのは百も承知で、鉄・アルミの輸入制限に続いて台湾への旅行自由化条例にも署名。「次は中国」とばかり、中国の反発や意見は全

然気にしない姿勢だ。首脳会談がおそらく秘密裏に去年の12月に決まり、ツイッターで「金正恩委員長は実に賢い」とつぶやいたころに、トランプ氏は勝利を確信したのだろう。そのあたりで米国憲法修正第25条第4節の「合法的クーデター」の心配が少なくなり、大統領の言うことを聞く閣僚がふえ始めた。

 

私のワシントンの情報ソースは「アンダー・ザ・レーダー・クラブ(お利口さん組)」を含め14人が大統領解任賛成ではない。態度保留の「ザ・フォー・エクセプションズ(特別四人組)」も含めてだ。(閣僚、重要機関の長23人)

面白いもので大統領支持率も上昇し、ラスムッセン調査では3月末47%と昨年11月比6%アップした。この「外患」だけは私は目鼻がついていると思う。もちろんまだ結果は現実には見えてきていないが。

 

 この映画が面白いのは、最高機密文書のスクープを獲得した瞬間でなく「スクープを発表するか、しないか」なこと。最高の場面は女社主のメリル・ストリープが、クローズアップで公表を決断するシーン。記事掲載を「やりましょう」。

 

 映画のセリフから。メリルが勝利を得てからトムに言う。「いつも完璧でなくても最高の記事を目指す。それが仕事でしょ?」私はマスコミの一部が「安倍おろし」に狂奔しているのが、バカに見えて仕方がない。

2018年3月26日 (月)

映画「ブラックパンサー」と森友と安倍政権(第902回) 

映画「ブラックパンサー」と森友と安倍政権(第902回) 2018・3・26

 米マーベル・スタジオの新作で2月に米国で公開されて爆発的なヒット、興行収入は12億ドル。先日のアカデミー賞授賞式でも司会者が「この瞬間でもブラックパンサーはメチャお客を集めている」と言っていた。

 同スタジオで初めての黒人が主人公の映画で、監督も主演も黒人、しかも舞台は貧しいアフリカだが、架空の国ロガンダは巨大隕石を利用して豊かな生活。搾取され内乱ばかりしている現実と違う。主人公はこの国の王であり、国を守る「ブラックパンサー」でもある。アメコミの主人公としては型破り、といえるだろう。派手なアクションは他作品と同じだが。

 

実は女性監督、女性主演で「ワンダーウーマン」が大ヒット。「シェイプ・オブ・ウォーター」も女性主演。女性とマイノリティ重視がハリウッドの新潮流だ。映画そのものは、まあ、いつものアメコミ・アクション。

 

23日は大変な一日だった。岩盤底、と見られていた2万900~1000円の底を簡単に破ったし、1ドル105円の壁も同様。相場の大前提がブッこわれたような、一見、印象を与える。前日のNYも724ドル安だったし、NASDAQも178ポイント下落した。

 

 何せ期末で日本の機関投資家は手が出ない。個人の方は籠池聴聞や27日の佐川証人喚問で、マスコミのバカ騒ぎも手伝って買いを手控える。外国、とくにヘッジファンドの売りは大した量じゃなかったが、吸収できずに1時1000円安と相成った。底値で大幅下げ、はよくあること。典型的な彼岸底形成パターンだ。今週から株価は極めて高い確率で中長期反発、円安に入るだろう。もちろん、おっかなびっくりだからスタートは一進一退だろうが。

 

 貿易戦争騒ぎは、実は日本は大丈夫だ。先日ペンス副大統領が平昌五輪で来日した時、関税問題を持ち出したら、日本製品には米国でどうしても必要なものが多いから、品目交渉で

影響ないようにすると言って笑ったとか。

 

 森友問題。野党は安倍さんに9月の自民党総裁選不出馬か、少なくとも麻生財政相辞任を狙って、昭恵さんを証人に呼びたくて仕方がないらしい。

 

 結論。身体がよほど悪くなければ安倍三選だろう。キーマンは二階幹事長だが、人づてに聞くと「自民党の支持率はむしろいい。要は内閣支持率が8月に上昇していればいいんだろう」という見方らしい。自民党長老たちは少々腰が引けているようだが。

 

 たしかに昨年10月22日の総選挙時の自民党の比例区得票率は33・3%、3月のNHK調査では36・3%。野党は減らしているところがほとんどだ。(立憲民主党19・9→10・2、希望17・4→0・6%。)

 

 4月中旬にはトランプ大統領と日米首脳会談をやるし、外交で支持率をあげられる。12月の沖縄、来年4月の統一地方選、参院選をやる前に、「北」の展開次第だが拉致問題で打点を稼ぐ手がある。

 

そんなに「北」を楽観視していいのか?という声がありそうだ。私はいずれ詳しく書くが、金正恩は「核放棄を条件に、現体制維持」という条件付き降伏した、という一般的でない見方をしているから。現に寧辺の黒鉛炉は停止した。

 

 話を相場・円レートに戻す。日本株8兆円を売却した外国人。6兆円は先物だから、いずれ買い戻さなくてはならない。株安は企業経営者にとって自社株買いのチャンス。円レートの方は、あと年内3回もある利上げはやはりドル高の材料だし、原油価格も円安。

 じゃあ3月23日の騒ぎは何だったの?と聞かれそうだし、テクニカル・アナリストに怒られそうだが、「ダマシ」じゃないかなあ。

 

 映画のセリフから。主人公は演説する「対立は話し合いで解決すべきだ。対立点より共通点の方が多いから。私の国で昔から言っているが『賢者は橋を作り、愚者は壁を建設する』。この映画は相当なトランプ嫌いが作っているらしい。

より以前の記事一覧